サメがプラスチックごみに絡まる−ゴーストネット問題

プラスチックごみが体に食い込むサメ

世界中の海で,サメが海洋ごみに絡まっています(Colmenero et al. 2017).

これまでに16種のサメが捨てられた漁具に絡まっていることが報告されており,そのうち88%は絶滅危惧種または準絶滅危惧種です(Colmenero et al. 2017).

ゴーストネット

海中でみつかるゴーストネット やむを得ず紛失した,あるいは海に捨てられた漁網や釣り糸はゴーストネットと呼ばれ,海洋ごみの主な発生源の1つとなっています(UNEP & GRID-Arendal 2016).

その量は重量にして海洋ごみの10%以下と推定されていますが(Macfadyen et al. 2009),過去数十年の間に漁業や漁場がますます広がり,それに伴いゴーストネットも急増しています.

プラスチックの利点は,安価で,軽く,丈夫で,耐久性のあることですが,同時に,海洋の環境にとって非常に危険な要因になっています(Laist 1997).

プラスチック製の漁網やロープはとても丈夫なので,絡まった動物の脱出を困難にしているのです(Kühn et al. 2015).

被害が多いのがメジロザメ科

ゴーストネットに絡まり死んでいるサメ 沿岸環境でもっとも数の多いメジロザメ科のサメが,もっともゴーストネットの絡まりの被害にあっています(Laist 1997, Colmenero et al. 2017).

地中海では,ヨシキリザメがプラスチックのひもに絡まりエラまで食い込んでいたことが報告されています(Colmenero et al. 2017).

大西洋で捕獲されたヨシキリザメも梱包用のプラスチック製の紐がエラの周囲に絡まっていました(Colmenero et al. 2017).

サメは,水面に浮かぶ漂流物を探している時に漂流するゴーストネットに絡まってしまいます(Bird 1978).

さらにサメは,何かモノを見つけると好奇心や確認のために近づいたりします.

こういった性質がゴーストネットに絡まる確率を増やしていると考えられています(Colmenero et al. 2017).

餌となる魚がゴーストネットを隠れ家にしている場合,なおさらサメなどの捕食者がゴーストネットに絡まるリスクを高めてしまいます(Cliff et al. 2002, Tschernij & Larsson 2003).

絡まるとどうなるか

漁具の絡まるジンベイザメ プラスチック製のひもに絡まることでサメは口を大きく開くことが出来ず,十分な摂餌ができず,また十分にエラから水を通すことが出来なくなります(Sazima et al. 2002).

プラスチック製のひもが長い間絡まっていたために背骨が変形してしまい,健全な成長ができなくなったサメも報告されています(Sazima et al. 2002).

さらに絡まってしまった漁具にフジツボなどの付着生物が大量につくことがあり,これがサメの泳ぐ効率を悪くし,遊泳速度を落とし,またサメの旋回性(せんかいせい)を悪くします(Wegner & Cartamil 2012).

漁具などのプラスチックごみに絡まることがサメの個体群を減らすほどに影響しているかどうかはまだよくわかっていません(Cliff et al. 2002).

しかしサメは,食物網の頂点に位置するキーストーン種であり,これらの捕食者が減ってしまうと,海洋全体の生態系に予期せぬ結果を引き起こしかねないと心配されています(Barría et al. 2015).

Acknowledgment: The author thanks Mary Malloy for permission to use copyrighted image.