こんなに有害!ポリ塩化ビニル(PVC)を避けた方が良い理由

ポリ塩化ビニル製のアヒル

ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)は、最も毒性が高く危険なプラスチックの1つとして認識されています。しかし、未だに信じられないほど多くの日用品を製造するために使用されています。子供のオモチャや消しゴムだけではありません。私たちの生活のあらゆる所にPVCは存在します。しかし、ここから体に有害な化学物質が溶出することはあまり知られていません。ここでは、PVCそのものや、そこから出てくる有害な物質について紹介します。

ポリ塩化ビニルとは?

ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride, 通称PVC)は、略して「塩ビ」「塩化ビニル」と呼ばれます。エチレンの1つの水素に塩素を反応させ置換したものが塩化ビニルモノマーとなり、これをたくさんくっつける(=重合する)とポリ塩化ビニルになります。

塩ビの特性として、水、薬品に強く、難燃性で、電気の絶縁性に優れます。塩ビはもともと、水道管の配管(塩ビパイプ)のように硬いプラスチックですが(=硬質塩ビ)、可塑剤(かそざい)を大量に加えることで、柔らかい塩ビになります(=軟質塩ビ)。

柔らかい塩ビは、ビニール製のプールや、おもちゃのソフト人形のようにソフトビニール(ソフビ)と呼ばれているものが軟質塩ビです。

ポリ塩化ビニルのアヒル

ポリ塩化ビニルの主な用途

主な用途として、硬質塩ビは、水道管などの配管・窓枠などの建築材料や、クレジットカードなどに使用されています。

柔らかい軟質塩ビは、玩具(おもちゃ)、人工皮革(合成皮革、合皮)、ラップフィルム、ビニル系床材や壁紙・ホースなどの住宅用品、シャンプーボトル、消しゴム、電源コードのカバー、農業用のフィルム、ビニールハウスなどに利用されています。

日本における塩ビの年間生産量は171万トン(2017年)です(塩ビ工業・環境協会)。

ポリ塩化ビニルのパイプ

大量の添加剤が使われています

塩ビは、最も添加剤を多く含むプラスチックのひとつで、世界の添加剤生産量のうち7割近くが塩ビのために使われています(Murphy 2001)。ポリマーを安定にするために熱安定剤が加えられ、また変形させるために大量の可塑剤が加えられます。

可塑剤としてフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)を代表とするフタル酸エステル、安定剤としてビスフェノールA(BPA)やノニルフェノールなどが使われます(Hermabessiere et al. 2018)。

可塑剤の量が製品重量の6割に達することもありますが、大抵は重量の10-40%を可塑剤が占めています(Navarro et al. 2010,Hermabessiere et al. 2018)。

塩ビから溶出する化学物質 -フタル酸エステル

塩ビに大量に使用される添加剤は、ポリマー(プラスチック)と化学的に結合しているわけではないため、プラスチックから浸出する場合があります(Patrick 2005, Lithner et al. 2012)。

たとえば合皮やビニールなどのやわらかい軟質塩ビからは大量に使われるフタル酸エステルが溶出することがあります(Patrick 2005, Lithner et al. 2012)。

一番身近な例では、消しゴムを思い出してください。消しゴムって定規など他のプラスチックとくっついているときがありますよね?あれは消しゴムから可塑剤のフタル酸が溶出したからです。

世の中に出回っているほとんどの消しゴムは塩ビです。お手元の消しゴムを見てください。PVCの文字がありますか?塩ビです。その横に以下の様に書いてあります。

「消しゴムや消しクズは、塗装面やプラスチック面などにくっついたり溶かすことがあります」 つまり、PVC製の消しゴムからフタル酸等の可塑剤が溶出するのです。

プラスチックのラップ

ポリ塩化ビニルの安全性?

フタル酸ブチルベンジル(BBP)とフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)は代表的なフタル酸エステルで、女性ホルモン・エストロゲンに似た症状を呈する内分泌攪乱物質として知られています。

フタル酸エステル類は環境中の至るところにあります。これはかなり大きな問題です。なぜならフタル酸エステルは低濃度でも内分泌かく乱物質として作用するからです。

またフタル酸エステルは急性毒性は低いものの、発がん性や生殖毒性については少なからず報告されいます。たとえば、乳がんのリスクを高める可能性が指摘されています(López-Carrillo et al. 2010)。

ヨーロッパ連合(EU)のRoHS(ローズ)指令は、フタル酸エステル類のうちDEHP、BBP、DBP(フタル酸ジブチル)、DIBP(フタル酸ジイソブチル)の4種類を禁止物質に指定しました。2019年の7月から規制が始まります。

塩ビの原料モノマーの塩化ビニルは発がん性物質として知られています(ASTDR)。

ポリ塩化ビニルの合皮
一部の合皮はポリ塩化ビニル(PVC)でできている

赤ちゃんや子供への影響

塩ビのダストがある家庭の子どもと喘息・アレルギー症状の関連性(Bornehag et al. 2004, Bornehag et al. 2005)や、子どもに見られる発達障害の1つであるADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)との関連性が指摘されています(Kim et al. 2009)。

日本では、食品が触れる可能性のあるパッケージやソフトビニール人形などの幼児や赤ちゃんが口にする可能性があるおもちゃ(具体的には対象年齢が三歳以下のおもちゃ)に危険なフタル酸エステルを含むポリ塩化ビニルの使用が制限されています。

その代わりに別の化学物質が入っていますが、それが何なのかは不明です。さらに3歳よりも上の子のおもちゃにはフタル酸エステルの使用が規制されていないということは、お兄ちゃんの使ったPVC製のオモチャを弟や妹の赤ちゃんが手に取ってなめてしまうことは大いにあり得ることです。

まとめ

商品を購入する際は材質をチェックしましょう。材質表示に「PVC」または「塩化ビニル樹脂」などと表記されています。

フタル酸を使っていない場合は「非フタル酸」などと明記されています。英語なら”Phthalate free”と表記されています。非フタル酸の表記がないPVCは、フタル酸が含まれいると考えて良いでしょう。

ポリ塩化ビニルは、一般的に有害なプラスチックです。なるべく避けて、使用しないようにしましょう。