いまや野生動物と海洋の環境にとって,海のごみは,最大の脅威の1つとなっています.
海洋動物は,主に2つの経路を通して,海ごみから被害を受けています.それは『誤食(誤飲)』と『絡まり』です.
プラスチックを誤食する海鳥
海鳥の場合,プラスチックの誤飲によって消化管は詰まり,胃潰瘍で胃に穴が空きます.
また胃にプラスチックが入っていると,お腹がいっぱいだと錯覚して食べなくなったりします.そして機能障害や餓死へと至ります(Kühn et al. 2015).
プラスチック製品が製造されるときに添加される有害な化学物質や,プラスチックが海を漂流している間に海水から吸着した汚染物質が海鳥に影響を与えているとも言われています(Rochman 2015).
海鳥がプラスチックに絡まった場合は,動けなくなり,あるいはケガをして食べ物を探しに行く能力が奪われます.
海鳥の巣作りにプラスチックが使われた場合,ヒナ鳥がプラスチックに絡まってしまい巣立ちが出来なくなってしまいます.
海鳥のヒナも誤飲
「大人の」海鳥によるプラスチック片の誤飲は世界中で広く知られています.アホウドリのヒナ鳥もプラスチックを誤飲していることが知られています.
しかし,ミツユビカモメなど他の海鳥のヒナについてはよく分かっていませんでした.
アイルランドの研究チームは,アイルランドに生息する3種類の海鳥(ミツユビカモメ,北フルマカモメ,カワウ)のヒナに食べ物を吐き出させて,プラスチックを誤飲していないか調べました(Acampora et al. 2017).
海鳥がプラスチックを食べているかどうかを調べるときは,浜辺に打ち上がっている海鳥の死骸や巣穴で死んでしまった海鳥を解剖するのが一般的です.
ですが,それでは「健康な」海鳥がプラスチックを食べているかまではよく分からないのが現状です.
ヒナからプラスチックを吐き出させる
海鳥の個体群調査(人口統計調査のようなもの)をするときに,研究者は海鳥にタグ(識別番号)をつけたりします.タグをつけるには,海鳥を捕まえなければなりません.
海鳥を手で捕まえたときに,海鳥は胃の中にある食べ物を,ペッと吐き出すことがあります.
それがストレスを感じてなのか,あるいは身を守るためなのかよく分かっていませんが,その吐き出した食べ物を調べることで,見た目には「健康な」海鳥がプラスチックを食べているかどうか知ることができます.
アイルランドの調査チームが調べた結果,全種類の海鳥のヒナからプラスチック片が見つかり,特に北フルマカモメのヒナがもっとも頻繁に誤飲していることが分かりました(Acampora et al. 2017).
まだ巣立ちをしていないヒナ鳥もまた,プラスチックの脅威に曝されていることがまた明白になりました.