2010年には800万トンのプラスチックごみが海に捨てられました(Jambeck et al. 2015).ダンプカーいっぱいのプラスチックごみを1分おきに海に捨てているのと同じです.
プラスチックの生産量は世界中で爆発的に増えています.
このペースでプラスチック製品を作り続け,海に垂れ流していると,2050年には海中のプラスチックごみの重さが魚の重さを超えると推定されています(World Economic Forum 2016).
プラスチックは驚くほど丈夫です
海の中に捨てられたプラスチックごみは,いずれ分解されてなくなるのでしょうか? 答えはノーです.
ここでいう分解とは,水と二酸化炭素やメタンなどに無機化されることを言います.
残念ながらほとんど全てのプラスチックは生物に分解されません(Andrady 1994).
一部は劣化して微細化し目には見えなくなってしまいますが,プラスチックであることに変わりはありません.
ほとんど全てのプラスチックは生物に分解されません(Andrady 1994).
天然の有機物とは異なり,合成ポリマー(高分子)であるプラスチックは安定な構造をもっており,驚くほど丈夫だからです.
プラスチックは,分子量が高く,疎水性で,架橋構造をしており,極めて丈夫です.
熱酸化や光分解によって非常にゆっくりと分解されていきますが,理論上,数百年から数千年は分解しません(Barnes et al. 2009).
したがって焼却でもしない限り,1950年頃から作られ始めたプラスチックごみはいまでも現存します(Geyer et al. 2017).
プラスチックはいったん海に入ってしまうと,さらに寿命がのびます.
なぜなら水の中では陸上のように熱酸化分解が起こりづらいからです.深い真っ暗な海では光分解も起こりづらいでしょう(Andrady 2015).
そのため今日,あるいは過去に製造され海に捨てられたプラスチックごみは,今後何十年,何世紀,あるいは何千年も海の中に残ると考えられています.いずれプラスチックの化石ができるとまで言う科学者もいます.
バイオマスプラスチックなら海でも分解されるか?
バイオマスプラスチックは,トウモロコシや藻類,タピオカなどを原料に作らます.
再生可能な資源から作るバイオマスプラスチックは,化石燃料(石油)を消費せずに済むというメリットがあります.
しかし今日主に製造されているバイオマスプラスチックは,石油由来のプラスチックと同じく合成のポリマーであり,海の中で石油由来のプラスチックよりも速く分解されるということはありません.
「微生物に分解される」生分解性プラスチックでさえ,特種な微生物や温度を必要としますから,陸上の埋め立て地やコンポストと違って,海の中では非常に長い間環境中に残り続けることになります(Kyrikou & Briassoulis 2007, UNPE 2015).
さらに多くのプラスチック製品には製造の段階で添加剤が加えられています.
添加剤とは,プラスチックを透明にしたり,柔らかくしたり,耐火性や高耐久性などの機能を付加するために加えられるケミカルです.
こういった添加剤を加えたプラスチックの寿命は,さらに長くなると言われています.
劣化するプラスチック
海に入りこんだプラスチックごみは,ずっと無傷というわけにはいきません.
海面を漂う間や海岸に打ち上がっている間,プラスチックごみは太陽光にさらされます.
浜辺では砂や波にもまれて,プラスチックごみ同士がぶつかり合い摩擦が生じます.
そして少しずつ劣化し,微細化していきます.
プラスチックごみは,小さなかけらとなってもポリマーとしての構造はそのままで,プラスチックであることに変わりはありません(Hopewell et a. 2009).
小さく微細化したプラスチックは,マイクロプラスチックと呼ばれ生態系に脅威をふるうようになります.
マイクロプラスチックは,世界中の海で見つかっています(LITTERBASE).浅海から深海まで,どこにでも存在します.北極の氷の中にも見つかっています.
海に入りこんだマイクロプラスチックを除去することはほぼ不可能です.そして海の環境中に,何世紀から何千年にもわたって残り続けるのです.
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[…] 海に入ると、何世紀も海に残ると言われているそうです。(参考:プラなし生活) […]