今日,海に捨てられるプラスチックごみの6割〜7割は比重が海水よりも軽いため,海の水面を浮かんでいます(Engler 2012).
プラスチックは軽くて丈夫です.また基本的に微生物には分解されないため,長時間浮かぶことが出来ます.
そのため小さな島のように,多種多様な生物を支える独自の生息地を作り出しています(Harrison et al. 2011, Zettler et al. 2013).
漂流するプラごみに生活する生物
水面に浮いて漂流する海洋ごみには様々な生物が生活しています.
最も頻繁にみられるのはフジツボですが,記録されているだけでも387分類群におよぶ様々な生物が漂流する海洋ごみから見つかっています(Kiessling et al. 2015).
海洋動物の住処になるには,なにも大きなごみである必要はありません.
例えば,北太平洋に生息するある種のウミアメンボは,漂流する小さなマイクロプラスチックに卵を産み付けています(Goldstein et al. 2012).
マイクロプラスチックがアメンボを増やす?
北太平洋では,プラスチックごみがたくさん見つかるようになってからウミアメンボの数が増えています.
その理由は,マイクロプラスチックが増えて産卵場所が増えたからではないか考えられています(Goldstein et al. 2012).
大量のプラスチックごみが北太平洋にやってくる以前は,ウミアメンボが卵を生み付けることのできる漂流物は木くずなど天然の小さな漂流物に限られていました.
ウミアメンボだけではありません.
海がプラスチックごみであふれる以前,多くの生物は海を漂流するココナッツや流木,軽石,草など天然の漂流物に頼っていました.
そういったものは頻繁に見られるわけではないので,漂流物に付着あるいは頼って生活する生物の数も限られていたはずです.
しかし漂流するプラスチックごみは,まさに「島」となり,数多くの生物に住処を提供しています.
『島の生物学』という有名な説が古くからあります.
大きな島はより多くの生物を養うことができ,小さな島はより少ない生物を養うといった具合です.
同じことが漂流プラスチックごみでも起きているのではないかと考える研究者もいます.
海洋ごみにヒッチハイキング?
漂流するプラスチックごみが引き起こす心配事の1つに外来種の問題があります.
もともとその地域にいなかった生物(外来種)がプラスチックごみに『ヒッチハイキング』してやってくることが懸念されています.
たとえば,2011年の東日本大震災の津波によって様々な海洋ごみが漂流し,北米の西海岸に漂着しました.
ある調査では,オレゴン州やワシントン州に漂着した海洋ごみ(ボートやドックなどの大型の海洋ごみ)から14種類のヒドロ虫が観察され,そのうち少なくとも5種類は北米で記録のない種類でした(Calder et al. 2014).
すでに海洋ごみからは何種類もの外来種が確認されています.
海洋ごみの増大によって,それらが帰化して生態系や人間活動に影響を及ぼす侵略的な外来種になってしまうのではないかと心配されています(Kiessling et al. 2015).
▽こちらの書籍では海のプラスチックの影響について、外来種の問題も含めて詳しく解説しています。