プラスチック-ライフサイクルのあらゆる段階で有害と判明

海ごみで描いたplasticの文字

プラスチックは、そのライフサイクルのどの段階をとっても人体に有毒であることが、国際環境法センター(CIEL : Center for International Environmental Law)の最新の調査で明らかになりました(CIEL Feb 2019)。

65ページにわたる調査報告書はそのライフサイクルの各ステージに焦点を当て、どのような経路を通じて人間に影響が及ぶのか、またどのような害があるのか衝撃的な内容が報告されています。(概要はこちら

調査結果の概要

人間のプラスチックへの暴露経路

ステージ1:抽出と輸送

プラスチックの99%は化石燃料に由来しますが、その主原料を抽出する際、170以上の有毒化学物質が水や空気中に大量放出されます。

これらは、癌や神経障害、生殖障害、胎児に影響する発達神経毒性、免疫システム障害を引き起こすことがわかっています。

肌や目、その他の感覚器官、呼吸器官、神経、消化器、肝臓、脳に直接的な影響を及ぼします。

ステージ2:精製と製造

化石燃料からプラスチック樹脂や添加物を作り出す際、空気中に発がん性物質や猛毒物質が放出されます。

これらに暴露すると、神経障害や生殖障害、発達障害、癌、白血病、遺伝的影響(低体重児の出産など)が引き起こされることがわかっています。

作業労働者やこうした精製工場に隣接した地域は、重大なリスクにされされているのです。

ステージ3:製品と包装

プラスチック製品の使用によって、無数の有毒化学物質(成分としてリストされていない発がん物質や内分泌かく乱物質)やマイクロプラスチックに晒されます。

人間はこれらを摂取したり、吸い込んだり、肌に触れたりしているのです。

ステージ4:廃棄

プラスチックの廃棄(焼却、ガス化、熱分解を含む)によって、鉛や水銀といった毒性のある金属やダイオキシン等が空気や水、土壌に放出されます。

作業者や近隣地域は汚染された空気を吸ったり、土壌に直接触れたり、その周辺で育った食物を食べることで直接的・間接的に有害化学物質にされされています。

廃棄物処理から遠く離れた場所でもその影響は避けられません。

排出された毒物、焼却時に出る灰やスラグは長い距離を飛散し、土や水の中に入ります。それらは動植物に取り込まれ、最終的には人間の体内に入ります。

ステージ5:劣化と断片化

プラスチックは一度環境中に出てしまうと、その大きさに関わらず、土壌や水、陸水の食物連鎖に入ってそれらを汚染していきます。

プラスチックには毒性のある添加物が含まれており、環境中に出るとそうした添加物がいとも簡単に外にしみ出します。

さらに、すでに自然界にある汚染物質も吸着・濃縮され、生物の体内に吸収されやすい状態になるのです。

マイクロプラスチックも問題です。

プラスチックが劣化していくと小さな断片(マイクロプラスチック)になりますが、それによってプラスチック表面に新たな断面ができます。

新らしくできた断面からは、中心部分の添加物が継続的にしみ出すことになり、環境を汚染し、人間の体内に入れば健康を害することにも繋がるのです。

慢性的に摂取すれば、炎症や酸化ストレス、細胞の壊死が起こり、結果的に癌や心疾患、炎症性大腸炎など数々の健康被害につながっていきます。

プラスチックへの暴露を阻止する

著者らは、すべての製造段階で使われる化学物質の正確な情報開示や、解決に向けた取り組みを促すため、法律の制定が必要と考えています。

また、製造に関わる作業者など、慢性的なプラスチックへの暴露を人権問題として扱うことも要求しています。

プラスチックによる環境汚染が明るみになっているにも関わらず、年々増え続ける生産量。

プラスチックを大量に消費し続ける企業やそれを当たり前にしている私たち消費者は、陰に潜むこうした事実をしっかりと知る必要があります。