プラスチックの新しい代替素材!イカの持つ「タンパク質」に注目

イカの吸盤

海洋汚染の大きな原因となっているプラスチックは、現在その持続可能な代替素材が模索されています。

イカのタンパク質であらゆる分野に応用可能な素材を作り出せることが、ペンシルベニア大学の研究チームの調査によって明らかになりました(frontiers in Chemistry Feb 2019)。

用途に応じた特性を持たせることが可能

イカの吸盤には歯の生えたリング(角質リング)があります。

研究チームは、この角質リングに含まれるタンパク質(角質環タンパク質)についてこれまで研究されてきた内容を検証。その結果、プラスチックに代わる生分解性の優れた代替素材であることを突き止めました。

角質環タンパク質は様々な特性を持たせることが可能で、さらに持続可能な生産ができるため近年注目を集めてきた物質。

研究チームはその分子配列を変えることによって、弾力性、柔軟性、強度、自己修復性、熱伝導性、電気伝導性などの特性を与え、角質環タンパク質由来の様々な試作品を作成しました。

合成繊維によるマイクロプラスチック汚染を防ぐ

角質環タンパク質はどのような用途で使えるのでしょうか?

例えば繊維。

合成繊維(ポリエステル、アクリル、ナイロンなど)の衣類は、洗濯によって多くの繊維が抜け落ち、排水されます。繊維自体が非常に細く小さいため、排水処理施設をすり抜けて海に流れ出ています。

このことから、合成繊維の衣類はマイクロプラスチック汚染の主な原因の一つと考えられています。

研究チームはマイクロファイバーを角質環タンパク質で均一にコーティングすることに成功。コーティングあり・なしで摩耗試験を行ったところ、両者に明らかな違いが現れました。

コーティングされていないマイクロファイバーの布はほつれ、個々の繊維もダメージを受けて破断していました。

一方コーティングした布の繊維は破断しておらず、抜け落ちもありませんでした。さらに面白いことに、繊維は力が加わった方向に整列していたのです。

角質環タンパク質で繊維をコーティングすることで、繊維に安定性をもたらし、その抜け落ちを防止できる可能性があります。

そのほか様々な特性を応用することで、新たな分野への活用が期待できます。

イカを捕獲することなく生成可能

角質環タンパク質は遺伝子組み換え細菌で作り出すことができます。つまり、イカを捕獲する必要がありません。

角質環タンパク質でバイオポリマーを生成するのに必要なのは砂糖、水、酵素。発酵を元にしたプロセスで安価に生成できます。

著者のDemirel氏によると、この素材を工業的な製造工程で使えるよう、現在さらなる技術開発が行われています。

現時点では制作に1キロあたり100ドルほどかかります。研究チームは、コストを10分の1ほどに抑えることを目標にしています。

角質環タンパク質由来の製品が広く利用されるよう、期待が高まっています。