周りを見渡せば、私たちの暮らしはプラスチックに囲まれ、プラスチックによって支えられていることに気づきます。
ここでは、私たちの生活の中にあふれるプラスチックを再確認してみたいと思います。
いままで気がつかなかった「隠れプラスチック」もあるかも知れませんよ。
洗面所
朝起きて、顔を洗いに洗面所に行きます。たくさんのプラスチック容器が並んでいます。
歯磨き粉をプラスチックのチューブからひねり出し、ナイロン毛の歯ブラシにのせて、歯を磨きます。歯ブラシの持ち手もプラスチック。口をゆすぐコップもプラでしょうか。
洗顔料をプラスチックのチューブ容器から手に取り、泡立てて顔を洗います。毛穴の汚れを落とすためのスクラブ粒には、今でも、ポリエチレンなどのマイクロプラスチックを使っている商品があります。
手を洗うときは、プラスチック容器のポンプを押して、液体石けんを手に取ります。中身がなくなれば、プラ容器に包まれた液体石けんを補充します。洗面台の下にストックしている人もいるでしょう。
髪をとかすクシはプラスチックかもしれません。
化粧品にも多くのマイクロプラスチックが使われています。ラメももちろんプラスチック。洗顔して化粧を洗い流せば、マイクロプラスチックが下水を流れていきます。
バスルーム・トイレのプラスチック
シャワーを浴びにバスルームへ。見渡せばたくさんのプラスチックが使われています。
浴槽・流し台には、ガラス繊維強化樹脂(FRP)やメタクリル樹脂が使われます。洗面器やお風呂の椅子にはポリプロピレンが使われています。
床で足を滑らせないための床マットはポリウレタン。シャワーのホースはポリ塩化ビニル(PVCまたは塩ビ)。
ボディシャンプー、シャンプー、リンスのボトルは、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート(PET)です。
体をゴシゴシ洗うボディタオルはナイロン製。
入浴剤を使えば、毎回、プラ包装のごみがでます。
浴室を出て、足下にあるバスマットは、すぐ乾くように化繊のマイクロファイバーをお使いかもしれません。
濡れた髪を乾かすときのドライヤーもプラスチック。高温になるため、燃えて火災が起きるリスクを減らすために難燃剤が加えられています。
トイレの便座はプラスチック。一般家庭のトイレの床材は、たいていポリ塩化ビニル(PVC)でしょう。
トイレットペーパーのホルダーもプラスチックかもしれません。スーパーマーケットに並ぶトイレットペーパーは、プラスチック包装に包まれています。
衣服・身の回り品
毎日手に持つスマホ。ケースをしている人は多いと思いますが、たいていプラスチックです。合成の革ならポリウレタンやPVC製です。
衣服の素材も、ほぼ必ずと言っていいほど(どこかしら)プラスチック繊維が使われています。
一番有名なプラスチックの服はポリエステルのフリースでしょう。
ほとんど綿100%でも、衣服に伸縮性をもたせるためにポリエステルやポリウレタンを混ぜたりします。ゴム紐はポリウレタンが多いです。
キッチン・台所
今度は台所に目を向けます。冷蔵庫を開ければ内壁はプラスチック。取り出した牛乳パックの内側はポリエチレンでコーティングされているし、ヨーグルトもプラスチック容器に入っています。
昨日の残り物には、透明のラップをしていますか。ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリエチレンです。
納豆は発泡スチロール(発泡したポリスチレン)の容器に入って、さらにポリエチレン包装。中を開ければ、タレやからしもプラ包装に入っています。
ジュース、お茶、炭酸飲料などの清涼飲料水のボトルや、醤油、みりんのボトルには、ペットボトルのPETが多く使われています。
冷蔵庫、炊飯器、電気湯沸かし器などには、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂などが使用されています。
これらの電化製品は、発熱して発火する恐れがあるため、プラスチックには難燃剤が練り込まれています。
料理するフライパンは、焦げがつかないようにと、フッ素樹脂がコーティングされているかもしれません。テフロンってやつです。
炊飯器のお釜の内側にもプラスチックがコーティングされています。だんだんハゲてきます。
ヤカンやフライパンの取っ手もプラスチック。フェノール樹脂やメラミン樹脂が使われます。野菜を洗うザルや、フライ返しもプラスチックでしょうか。
包丁を使うとき、白いまな板はポリプロピレン製。油や調味料の容器も多くはプラスチックです。
ティーバッグで紅茶を飲みますか?ティーバッグもプラスチックでできてます。ナイロン製のバッグや、不織布のものでも中にプラスチック繊維が使われています。
食器も、見た目は陶器のようであっても、それはメラニン樹脂かもしれません。木製のお椀だと思いきやプラスチックだったこともよくある話しです。
プラスチックではない食器を求めて、漆塗りの食器や箸を買ったつもりかもしれませんが、表面がポリウレタンでコーティングされていることはよくあります。
食器を洗うスポンジはポリウレタンだし、少量の洗剤で済むからとアクリルタワシを使えば、それもプラスチックです。白いメラニンスポンジ(いわゆる、〇落ちくん)もメラニン樹脂というプラスチック。
生ゴミを集めるネット(網)は、〇〇円ショップで買った不織布のネットをお使いかもしれません。毎回、プラスチックのごみがでます。
食品と買い物
スーパーや食料品店に行けば、ありとあらゆる食品がプラスチックに包まれる光景を見ることが出来ます。
軽くて、丈夫で、水や空気を通さないし、透明で中身が見えるといった特徴がうけて、プラスチックは、肉、魚、野菜の食品トレーやラップ、お菓子の袋などの食品容器包装にたくさん使われています。
お菓子の袋はポリエチレンやポリプロピレン。食品トレーはポリスチレンやポリプロピレン。卵のパックはPETです。
チーズやゼリーなどの水物の包装フィルムにはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン(ポリアミド)、ポリエチレンなどの複合素材が使われます。
果物は、プラスチックに「もっとも包まれた」食品のひとつでしょう。手厚く何重ものプラスチックで保護されていますね。皮につつまれたバナナまでプラ包装に包まれています。
おそらく、プラスチックに「包まれ度」ナンバーワンの果物は桃です。あの傷つきやすい表面を守るために、プラスチックの緩衝材とハードケースで厳重に保護されており、箱入れ娘ならぬプラスチック箱入れ娘のようです。
冷凍食品の真空パックなど、熱湯であたためるタイプの包装材は、内側にポリエチレン、外側に酸素などのガスバリアに優れたナイロン(ポリアミド、PA)が使われています。
インスタントのカレーなど、常温で長期保存できるレトルトパックは、ポリエステル、アルミニウムのフィルム、ポリエチレン等の多層構造になっています。
海でとれる魚も、私たちの食卓にあがるまでに様々なプラスチックのお世話になります。漁船やボートは繊維強化プラスチックのFRP船が主流です。
魚は、プラスチック製の漁網で捕獲されるか、プラスチック製の釣り糸で釣り上げられます。
釣った魚は、発泡スチロールの保冷容器にいれて、港まで運ばれ、卸され、お店に輸送される間もずっと発泡スチロールの容器で運ばれます。
その後、薄い発泡スチロールのトレイに乗せられ、プラスチックの透明なラップをかぶせて、店頭に並びます。お客さんはそれを手に取ると、備え付けのプラスチックの袋に入れてレジまで運びます。
スーパーのレジで会計を済ませたら、たっぷりとプラスチック袋(レジ袋)を渡してくれます。
外出先でテイクアウトしたり、コーヒーショップでコーヒーをテイクアウトすれば、毎度たくさんの「使い捨てプラスチック」が発生します。
レストランやカフェに入って席につけば、ほぼ必ずと言ってイイほど、ポリエチレンの袋に入った不織布のおしぼりを渡されます。
リビングルーム
リビングルームでくつろげば、そこにもたくさんのプラスチックが使われています。
白い壁紙は、たいていポリ塩化ビニル(PVC)です。床も、それがビニール床材ならPVC。
家具にも様々なプラスチックが使われています。ソファに座って、それが合皮(合成革皮)ならポリウレタンかPVC。中のクッションはポリウレタン。
テーブルやイスなど、安価な組み立て家具にはMDS製が多いですが、これは木材の粉をプラスチックの接着剤で固めたものです。
木製でも表面がとてもツルツル(テカテカ)していれば、何度もポリウレタン樹脂を表面に塗り込んだのでしょう。
足下のカーペットはナイロンかアクリル製。カーテンはポリエステル繊維で作られています。カーペットやカーテンは、火事による燃焼を防ぐために難燃剤が大量に使われています。
テレビやエアコンなどの家電は、丈夫なABS樹脂などのプラスチックが使われています。
寝室
夕食の後、眠くなって寝室に行きます。プラスチックではない寝具を探すのはいまでは大変なことです。
冬ならフリース素材(ポリエステル)のパジャマを着るでしょう。枕の中綿は、ふわふわならポリエステル、低反発素材ならポリウレタンです。
さらにフワフワなポリエステルの毛布に体を包み、ポリウレタンのベッドで眠ります。
低反発タイプのベッドマットレスはほぼ間違いなくポリウレタンです。最近では綿100%の布団を探すのも難しくなってきました。
子ども部屋・おもちゃ
今度は子供部屋に目を向けてみます。
子どものオモチャは、プラスチックばかりです。プラスチックは成形しやすく、着色も容易なので、おもちゃにたくさん使われています。
やわらかいビニールの人形や、フィギュアなど、子供が手に取る人形の多くには、ポリ塩化ビニル(PVC)が使われています。ガチャガチャのおもちゃも多くはPVC製です。
プヨプヨとやわらかいボールは、PVCかポリウレタン。空気で膨らますタイプのボールや地球儀はPVC。いわゆるビニールという素材です。
硬いおもちゃならABS樹脂なども多いです。レゴブロックはABS樹脂。電車を走らせるプラレールは、ポリプロピレンなどが使われます。
ぬいぐるみの中綿には、ポリエステル繊維が使われ、ぬいぐるみの表面のフワフワもプラスチックの化学繊維です。
フェルト製の布のおもちゃも、いまはほとんどが化学繊維です。
そういえば、赤ちゃんのオムツ。紙オムツという名前は正しくなく、正確には「プラスチックおむつ」です。
おむつの大部分がプラスチックで構成されています。外側の表面は不織布。テープもプラスチック。中の吸水性ポリマーもいわばプラスチックです。
子どもの手を拭くのに、家庭でも使い捨ておしぼりを使う方はたくさんいらっしゃいます。不織布にはプラスチック繊維も含まれ、使い捨てプラスチックの代表選手です。
文房具
文房具もほとんどがプラスチック製です。
小学校で使う下敷きはPVC製。定規も多くはPVCだし、消しゴムには軟質のPVCが使用されています。
消しゴムが、筆箱の中で定規とくっついていたなんて経験はありませんか?それは消しゴムのPVCから、プラスチックを溶かす化学物質(フタル酸エステル類など)が漏れ出すからです。
ボールペン、シャープペンなどのペン類もほとんどがポリプロピレンやポリスチレン製。鉛筆のキャップもプラスチックだし、鉛筆削りも外側はプラスチック。
木工ボンドなどの接着剤もプラスチック。セロテープなどテープ類もプラスチックでできています。
建材に使われるプラスチック
庭やベランダに出てみれば、エアコンの室外機から延びているプラスチックのパイプに目がとまります。これはPVCのパイプ。
PVCは建材にたくさん使われていて、リビングのところでも紹介した壁紙、ビニールの床材、窓枠などに使われています。
室内のドア枠も、木製だと思ってよく見たらプラスチック(PVC)だったというのはよくあることです。
その他、目には見えない場所にもたくさん使われています。たとえば、水道管の灰色のパイプはPVCです(いわゆる、塩ビパイプ)。
壁の内側の断熱材には、ポリスチレンやポリウレタンなどが使われています。
自動車・乗り物
乗り物だって多くのプラスチックが使われています。車も、重量の15%くらいはプラスチックでできています。
ジェット機も、その半分くらいはプラスチックが占めています。プラスチックをたくさん使うことで軽くなり燃料の消費を抑えているのです。
通勤電車でつかまるつり革は、革ではなくプラスチック。昔は革だったのでしょう。
車の中を見渡せば、室内はほとんどがプラスチックです。ハンドル、ダッシュボード、シートベルト。シートがソフトレザー(合皮)ならポリウレタンなどが使われています。ファブリック生地ならポリエステル。
天井にもポリエステル、カーペットはナイロンなどが使われています。
まとめ
いかがでしたか?プラスチックは、電化製品、家具、台所用品などの日用品、おもちゃ、文房具、食料品から乗り物まで、私たちの周りにたくさん使われています。
ここで上げたのはほんの一例です。プラスチック漬けの生活を送る私たち人類にとって、プラスチックのない生活なんてちょっと想像できません。
プラスチックは私たちの生活に広く普及しており、様々な役割を果たしています。もはやプラスチックのない生活を想像することは不可能でしょう。
しかし私たちの身近にあるプラスチックは、素の状態で製品として利用されることは滅多にありません。
火災を予防するための難燃剤、樹脂をやわらかくするための可塑剤(かそざい)、紫外線のダメージを抑えるための紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤など、なんらかの化学物質が練り込まれています。
これらは総称して「添加剤」といいますが、中には長期的に触れることで、健康の質が下がる物質も多くあります。
これだけプラスチックに囲まれて暮らしているのですから、身近なプラスチックについてもっと知っておくことはとても大事なことです。
<参考文献> 三島桂子(2001)プラスチック. 現代書館 p174
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