環境中に散らばっているプラスチックごみ。
様々な要因で、ナノサイズの非常に小さな粒子に分解される危険性を秘めています。
ルンド大学は、プラスチックごみに機械的にダメージを与えることで、どのような変化が生じるのか調査を開始。模擬的に海洋プラスチックごみの劣化の様子を捉えようとしています。
海ゴミの大部分はプラスチック。
世界中で生産されているプラスチックの数%が海に流入するといわれています。
海に入ったプラスチックごみは、化学的または機械的な作用によってボロボロに劣化していきます。
具体的には、波の力で石や海底、そのほかのゴミにぶつかったり、擦り合ったりしながら粉砕されていきます。太陽の紫外線もこれと同じようにプラスチックごみを粉々にしていくのです。
このように環境中で細かくなっていくプラごみですが、ナノサイズにまで崩壊することがあるのでしょうか?
研究者たちの間では、「比較的大きなかけら(マイクロプラスチック)に分解されて崩壊がストップする」、または「実際はさらに崩壊が進み、より小さい粒子が発生する」という2つの意見に分かれています。
スェーデン・ルンド大学の研究グループは、プラスチック材料を機械的に劣化させる実験を行い、その実態の解明に乗り出しました(Ekvall et al. 2019)。
同大学の化学研究者であるセダーヴァル氏は次のように述べています。 「この研究は、環境中のプラスチックに何が起こるのか、また動物や人間にどんな影響を及ぼすのかという重要な問題に関わるもの。
ナノプラスチックは、数百万分の1ミリという非常に小さな粒子です。そのため、生物の体内にまで到達するといわれています」 昨年、ルンド大学の先行研究において、ナノサイズのプラスチック粒子は魚の脳に侵入することがあり、さらに魚の行動を妨げる損傷を引き起こすことが示されました。
研究は実験室の中で行われたもので、実際の自然環境とは異なります。しかし、ナノプラスチックが生物に悪影響をもたらす危険性があることは確かです。
これまでマイクロプラスチックそのものの研究や、様々な生物を調査することでマイクロプラスチックの分布を調査する研究に重点が置かれてきました。
今、自然の中からナノプラスチックの存在を確認しようとする大きな試みが始まっています。 崩壊したプラスチックに何が起こるのか、そこを捉えていくことが重要であるとセダーヴァル氏は語っています(Science Dialy Dec 2018)。