プラスチックの原料になるプラスチックペレット。
「人魚の涙(mermaid tears)」とも呼ばれるこの小さな樹脂(1~5mm)は、本来ならプラスチックの製造工場だけで見られるはずのもの。
しかし、実際は海の中や砂浜、河川や湖にも落ちており、海では海洋生物が餌と間違って食べています。
ペレットは溶かして成形することで、使い捨てのペットボトルから家電製品まであらゆるプラスチック製品の原料になります。
では、どうして自然界に流出するのでしょうか。
ペレットは軽くて非常に小さいため、輸送や加工中の管理を誤ると簡単に外へ漏れ出していきます。
風に飛ばされたり、こぼれ落ちたりして行方知らずとなったペレットは、排水管を通して河川や海に放出されるのです。
その数は何十億個という規模に上ります。
小さくて丸い形、カラフルな色。ペレットは魚卵や小さな獲物のように見えてしまいます。
海洋生物に与える潜在的な悪影響を考えると、「人魚の涙」というニックネームは的を得ているかもしれません。
というのも、そこには有害な化学物質の問題が潜んでいるからです。
ペレットはポリマーであり、また小さいために表面積が大きく、海水中の残留性有機汚染物質(POPs)がその表面に蓄積しやすくなります。
「残留性」というだけあってこの汚染物質は簡単に消滅することはなく、何年もの間ペレットの表面に留まり続けます。
さらに、危険な細菌が住み着くこともあります。
スコットランドのイーストロージアン(英)にある5つのビーチで行われた研究によると、全てのビーチで食中毒の原因となる大腸菌がペレットを苗床にしていたのです(Rodrigues et al. 2019)。
では、海や海岸にどのくらいのペレットが落ちているのでしょうか。
英国では、年間で最大530億個のペレットがプラスチック産業から漏れ出していると推定されています(Fidra)。これは、ペットボトル8,800万本の製造に必要な量です(PHYS.ORG Apr 2018)。
このような事実があるにも関わらず、プラスチック汚染の議論でペレットが取り上げられることはあまりありません。
参考 海洋マイクロプラスチックとは?その発生源は?プラッスチックの海
海洋汚染にどれほどペレットが加担しているか、その意識を高めるためにFidra(英の環境慈善団体)はGreat Global Nurdle Huntを立ち上げました。
その活動は、一般市民によるビーチでのデータ収集。
世界中で集めたペレットの調査データはオンライン上の地図に記録され、ペレット汚染の状況や時系列でどのように変化しているか見ることができます。
このようなデータを集めることで、プラスチック産業による汚染の原因を特定し、ペレットの管理を適正化するための情報として役立てることができます。
2012年以来、1,610のビーチで調査が行われ、6大陸18ヶ国、60以上の組織が関わる大規模な活動に成長しています(The Conversation Feb 2019)。
日本にも「インターナショナルペレットウォッチ」という活動があります。
海で拾ったペレットをこの団体に送ることで、世界的なモニタリング調査に参加することができます。
もしあなたもこういった活動を行うなら、いくつか役立つヒントがあります。
BB弾はペレットとよく似ています。間違えないようにオンラインのペレットガイドをチェックしてみてください。
さらに、落ちている海藻やゴミ、木片、貝殻などをよく調べること。ペレットはこういったものによく付いています。直接触らないように、手袋も持参してください。