すぐには分解されない!?海洋ごみとは?

海に浮かぶプラスチックごみ

海洋ごみ』とはなんでしょうか?なぜ問題なのでしょうか?

『海洋ゴミ』と言えば,海に浮かぶ様々なごみを思い浮かべるかも知れません.シャンプーボトル,ビーサン,ペットボトル,ポリ袋...

海洋ごみとは,人間が生み出した廃棄物のうち,何らかの理由で海岸や海に入りこみ,そして自然には容易に分解されないものを指します.

海洋ごみの定義はなんでしょうか?

米国海洋大気庁(NOAA)によれば以下のように定義されています.

ほぼ永続的に固い状態を保持する物質であり,人間によって製造または加工されたもので,それが直接的にせよ間接的にせよ,故意であろうとなかろうと,海に処分または放棄されたもの

海洋ごみのほとんどはプラスチック

サイズがもっとも大きな海洋ごみと言えば難破船や漁業で使用した巨大な漁網などでしょう.車やコンテナなんかもあります.

たとえば,津波によって流された船,車,オートバイなども海洋ごみとして扱われます.

一般的に知られている海洋ごみの材質には,紙,木,生地,金属,ガラス,セラミック(陶器など),ゴム,そしてプラスチックがあります(UNEP 2005).

海洋ごみの中で,ダントツに多い素材はプラスチックで,そのほとんどが消費者向け製品からくるごみです.

あなたが海岸を歩いているときに,おそらく最も頻繁に見る海洋ごみは,プラスチックの袋(ポリ袋),コンビニ弁当などの飲食品の容器,釣り糸,ペットボトル,タバコの吸い殻など,様々なプラスチックごみでしょう.

タバコもプラスチックでしょうか?タバコのフィルターはセルロースアセテートという有機合成ポリマーでできおり,1種のプラスチックと言えるでしょう。

最大の原因は使い捨てプラスチック

海の表層,海岸,海底で見られるごみのうち,だいたい8割以上(ときに100%!)はプラスチックごみが占めています(UNEP and GRID-Arendal 2016).

ちなみに海洋ごみの大部分を占めるプラスチックごみのうち,最も多いのが食品の容器,ポリ袋,ペットボトル,洗剤の容器,発泡スチロールといった包装や梱包に使われるプラスチックです.

そのほとんどが1度使っただけで捨てられてしまう使い捨てプラスチックです.

プラスチック製品全体に占める使い捨てプラスチック製品の割合は,製造される時点でおよそ30-40%ほどです(Plastic Europe 2015, American Chemistry Council 2015, Velis 2014).

しかし使い捨てプラスチックは,ごみになるとプラスチックごみ全体の6割以上を占めています.

つまり使い捨てプラスチックが,海洋ごみの最大の発生源となっています(Hopewell et a. 2009).

私たちの健康を脅かす可能性があります

いったん海に入りこんだプラスチックごみは,長い距離を運ばれ外洋の表層から深海底まで,あるいは北極の氷の中まで,海洋のありとあらゆる場所に潜り込んでいきます.

プラスチックごみを餌と間違えて誤食し死んでいクジラやウミガメなどの海洋動物.プラスチックごみに絡まって絞殺される海洋動物の数は恐ろしいほど増え続けています.

海に入ったプラスチックごみは,時間の経過とともに劣化してボロボロになり,小さなかけらになります.このようなプラスチックごみのかけらは,マイクロプラスチックと呼ばれます.

マイクロプラスチックの定義はなんでしょうか

マイクロプラスチックとは,長さが5mmよりも小さいプラスチックの欠片のことです.捨てられたプラ製品は,いずれ劣化して微細化しマイクロプラスチックになります.

マイクロプラスチックは工場でも製造されています.例えばプラスチック製品の中間原料となるプラスチックのペレットや洗顔フォームに含まれるスクラブ粒も多くはマイクロプラスチックです.

フリースなどの化学繊維からでてくる化繊クズもマイクロプラスチックの仲間です.

微小なマイクロプラスチックは海のいたるところで見つかっており,生態系に与える影響が心配されています.

マイクロプラスチックは,DDTやPCBsなどの危険な化学物質をよく吸着します.そしてイワシや貝,動物プランクトンなどの小さな海洋動物に食べられ,海洋の食物連鎖に入りこみ,やがて私たちの食卓に帰ってくると考えられています.

しかしまだ研究が始まったばかりで,生態系や人間の健康にどれほど影響があるかははっきりと分かっていません.