海洋のごみ問題は,地球温暖化と同じように(いやそれ以上に!?)緊急な解決が求められている国際的な環境問題です.
なぜなら,もうすでに私たちの将来ののどを詰まらせて始めているからです(UNEP Newscentre).
毎年、東京スカイツリー8000個分のプラスチックが生産
1950年以来,プラスチックの生産は爆発的に増えています.
1年間に製造されるプラスチックの量は3億3500万トンに達しました(2016年時点)(PlasticEurope).
これは東京スカイツリーを約8,170個足し合わせた量に相当します(*地上本体鉄骨重量4,1000トンで計算).
イメージにするとこんな感じです.
プラスチック漬けの社会
周りを見渡してください.
現代の社会はプラスチックなしには成り立ちません.
私たちが消費するほとんどのものはプラスチックでできています.
あなたが手にしているスマホのケース,ペットボトル,ボールペン,ヤクルトの容器,テイクアウトの容器,シャンプーのボトル.全部プラスチックです.
さらに,1度限りの使用で役目を終える「使い捨てプラスチック」であふれています.
通勤途中,コンビニやコーヒーショップに寄って,冬なら温かいラテを,夏なら冷たいフラペチーノを頼むかもしれません.
テイクアウトの容器やフタはプラスチックです.
飲み終わったらすぐにごみ箱行きです.
一見,プラスチックは無害に見えます.
しかしごみになって海に入ると,多くの海洋生物にダメージを与えています.
同時に,かけがえのない海の生態系を脅かしています.
海に漏れ出すプラスチック
ほとんどのプラスチックごみは,埋め立て地に行くか,もしくは焼却されます.
しかし一部は「漏れ出して」海に入ります.
毎年,世界中で捨てられるプラスチックごみのおよそ2%〜5%が海に漏れています(中間値で3%).
漏れ出たプラスチックは2010年の時点で800万トン(中間値)と推定されています(Jambeck et al. 2015).
ダンプカーいっぱいのプラスチックを1分毎に海に投棄するのと同じです.
プラスチックごみが,海洋動物に絡まり,あるいは誤食され,野生動物の死を招いていることはよく知られています(Kühn et al. 2015).
マイクロプラスチックは汚染物質の運び屋
目に見えるプラスチックごみよりもずっと危険なのは,マイクロプラスチックです.
マイクロプラスチックとは,プラスチックごみが顕微鏡サイズにまで小さく微細化したプラスチックの破片です.
化粧品やケア用品に含まれるマイクロビーズもマイクロプラスチックです.
排水溝に流れたマイクロビーズは,下水処理場をすり抜けて,やがて海に流れていきます(Malik et al. 2015).
これら小さなプラスチックは,PCBやDDTといった有害な化学物質をスポンジのように吸着します(Teuten et al. 2009, Engler 2012).
そして動物プランクトンや小魚,貝などの海洋動物に食べられ,食物網に入って汚染物質を濃縮していくのです.めぐりめぐって,あなたの食卓に紛れ込んできます(Thompson 2015).
マイクロプラスチックが汚染物質の運び屋になっているわけです.
増え続ける海のプラスチックごみが今後どんな影響を及ぼすか,まだ誰も知りません.
でも2つだけたしかなことがあります.
このままのペースでプラスチックを生産し消費し続けると,海に蓄積するプラスチックの量は生息する全ての魚よりも多くなること(World Economic Forum 2016).
そして誰かが捨てたプラスチックごみは,マイクロプラスチックとなってあなたの体に入りこむという事実です.
▽こちらの書籍では海のプラスチックの問題について一冊読めばその全貌がわかるように詳しく解説しています。