カタクチイワシの肝臓からマイクロプラスチック?

カタクチイワシの群れ

ベルギーの研究チームが,ヨーロッパアンチョビの肝臓からプラスチックを見つけたと発表しました(Collard et al. 2017).

ニシン目に属するカタクチイワシ科の一種で,ピザやパスタなどのイタリアンや塩漬けアンチョビの缶詰めとして日本でもよく知られた食用魚です.

海に広がるマイクロプラスチック

海洋マイクロプラスチック

1950年代以降,プラスチックは大量に生産され続け,海洋や浜辺をはじめ河川や湖など様々な水圏生態系を汚染し続けています.

プラスチックは北極のようなあまり人の住んでいない場所からも見つかっています(Lusher et al. 2015).

プラスチックごみは,太陽光の紫外線にあたって劣化また摩耗によって微細化し(Andrady et al. 2003, Barnes et al. 2009),直径5mm以下のような小さなマイクロプラスチックや1マイクロメートルよりも小さなナノプラスチックになります(Cole & Galloway 2015).

魚による誤食

これまでに,さまざまな魚の体内からマイクロプラスチックが見つかっています(Anastasopoulou et al. 2013, Foekema et al. 2013, Lusher et al. 2015, Romeo et al. 2015, Romeo et al. 2016, Neves et al. 2015).

最近の研究から,アンチョビは,マイクロプラスチックが吸着したプランクトンの「におい」に反応して,プラスチックを餌と間違えて誤食(誤飲)していることが分かっています(Savoca et al. 2017) .

魚で見つかるマイクロプラスチックが実際にどれだけ生態系に影響を与えているかは,まだよくわかっていません.しかし人が食べるだけに心配はつのる一方です.

肝臓からも見つかるマイクロプラスチック

カタクチイワシのニボシ

恐ろしいことは,食べたプラスチックが何らかの理由で消化管を通り越して臓器にまで移行していたことです.

たとえばヨーロッパカタクチイワシ(Engraulis encrasicolus)では,実験的に与えたポリエチレン粒子(約125-440マイクロメートル)が肝臓にも運ばれていたことが報告されています(Collard et al. 2017).

またヨーロッパマイワシ(Sardina pilchardus)とタイセイヨウニシン(Clupea harengus)の肝臓からもマイクロプラスチックが検出されました(Collard et al. 2017).

ボラの仲間(Mugil cephalus)でも,0.1〜1 mmのプラスチック粒子に曝された場合,そのうち0.2-0.6 mmのサイズのプラスチック粒子が肝臓まで運ばれたことが知られています(Avio et al. 2015).

肝臓にマイクロプラスチックが運ばれた要因としては,マイクロプラスチックが腸壁を通過してきたことや,ナノプラスチックのように極めて微細になったプラスチックが腸壁を通過し,肝臓内で再び凝集してマイクロプラスチックになったのではないかなどと考えられています(Collard et al. 2017).

似たような実験では,メダカをナノプラスチックに暴露した際に,メダカの腸,精巣,肝臓から約40ナノメートルのポリスチレン粒子が検出されています(Kashiwada 2006).

それらのプラスチック粒子は,メダカの消化管上皮やエラから入りこんで血液にのって運ばれていったのではないかと考えられています(Kashiwada 2006).