海プラスチックごみに絡まるクジラ

漁具をまとわるクジラ

多くのクジラもまた,プラスチックごみに絡まる被害者です.

現存するクジラの全種類のうち,すでに3割を超える種類からプラスチックゴミによる絡まりが報告されています(Kühn et al. 2015).

原因は捨てられたプラスチック製の漁具

現在使用されている,ほぼ全ての漁網はプラスチックでできており,軽くて浮力があり,耐久性があり,強度が強く長持ちするようできています.

同時に,絡まってしまったクジラにとって脱出を困難にする要因になっています.

小さなクジラの場合,漁具に絡まり抜け出せずに溺れ死にますが,大型のクジラでは漁具を体に巻き付けたまま引きずって生活し,やがて餌がとれなくなり餓死していきます(Hammer et al. 2012).

漁網に絡まるクジラ

世界中で報告されるクジラの絡まり事故

クジラやイルカでは,口,首の周り,ひれ足,尾びれに漁具が絡まります(Moore et al. 2013, Van der Hoop et al. 2013, Johnson et al. 2005).

北大西洋で行われたセミクジラとザトウクジラの調査では,絡まった漁具の多くにカゴや刺し網が含まれていました(Johnson et al. 2005).

こういった漁具は,長いロープや浮きとつながっており大型のクジラがしばし絡まることが分かっています(Johnson et al. 2005).

北大西洋の調査では,観察されたセミクジラ626個体のうち,実に83%の個体がロープや網による絡まりを経験していた(体の表面に絡まった跡傷が残っている)ことがわかっています(Knowlton et al. 2012).

北西大西洋では,1970年から2009年の間(大部分は1990年以降!)に300頭以上の大型クジラが捨てられた漁具に絡まり死亡しています(van Der Hoop et al. 2012).

漁具に絡まるクジラ

子供のクジラのほうが絡まりやすい

米国のメイン湾における調査では,ザトウクジラの約5割が漁具の絡まりによる傷があったことが報告されています(Robbins & Mattila 2004).

大人のクジラよりも子供のほうが,漁具に絡まってしまう確率が高いようで生存率の減少に拍車をかけています(Cassoff et al. 2011).

プラスチック製の漁具は軽く浮力があります.大型のクジラが漁具に絡まって死亡した場合,その重さによって漁具も一緒に海底に沈みます.

しかし、死んだクジラは底生生物に食べられ,やがて骨だけになるとクジラを絡めていた漁具は再び浮力を取り戻し,また海中を漂いはじます.

そして,別のクジラを絡めるという負のスパイラルを引き起こしています.