クラゲを食べるウミガメの映像がナショナルジオグラフィックから公開されています.
しかしクラゲを食べるウミガメは,ビニール袋(ポリ袋)をクラゲと間違えて食べています.
海洋ごみを間違えて食べるウミガメ
海のプラスチックごみの蓄積と拡散は,およそすべての海洋環境になんらかの影響を与えています.
多くの海洋生物がプラスチックごみから直接的あるいは間接的に被害を受けています.
その1つが,海洋プラスチックごみの「誤食(または誤飲)」です.
ウミガメでは,すでに100%の種類(7種のうち7種)で海洋ごみの誤食が報告されています(Kühn et al. 2015).
ウミガメによるプラスチックの摂食が初めて報告されたのは1968年にさかのぼります(Mrosovsky et al. 2009).
ウミガメは,ビニール袋などの柔らかくて透明なごみを好んで食べる傾向があります(Schuyler et al. 2014).
おそらくクラゲなどの餌と間違えて食べています(Mrosovsky et al. 2009, Tourinho et al. 2010, Campani et al. 2013, Schuyler et al. 2014).
またゴム風船の破片も間違えてよく食べています.
プラスチック片に付着した生物を食べようとして結果的にプラスチックを食べている場合もあります(McCauley & Bjorndal 1999, Tomas et al. 2002).
たとえば,アカウミガメの胃の中からでてきたプラスチックには海アメンボの卵が付着していることがあります(Frick et al. 2009). この卵を食べようとして一緒にプラスチック片を食べてしまった可能性が指摘されています(Kühn et al. 2015).
消化管がプラスチックで閉塞
ウミガメは,間違えて食べたプラスチックをいとも簡単に腸まで運んでしまいます.
そのため,ほとんどのプラスチックごみは胃よりもむしろ腸で見つかります(Bugoni et al 2001, Tourinho et al. 2010, Campani et al. 2013).
結果的にプラスチックの摂食によって腸閉塞など腸の機能が阻害されます.
地中海で行われた研究では,調査したアカウミガメの71%の個体の消化管からごみが見つかりました.
さらに成体カメ(1匹あたり平均27個のごみ)のほうが,子ガメ(平均19個)よりもたくさんのごみを摂食していることがわかっています(Campani et al. 2013).
アカウミガメやアオウミガメでは,プラスチックの摂食が多いほど栄養状態が悪くなることが確認されています(Lutz 1990, McCauley & Bjorndal 1999).
まったく栄養のないプラスチックを大量に誤食することで本来の餌を食べることができず,やがて死にいたっています(Bugoni et al 2001, Mrosovsky et al. 2009, Tourinho et al. 2010).