英国・アングリアラスキン大学は、プラスチックが土壌に生息するミミズや地表に成育するホソムギにどのような影響を与えるのか調査を行いました(Boots et al. 2019)。
特定のプラスチックでミミズの体重や植物の育成に変化
用いられたプラスチックは3種類で、いずれも微細なマイクロプラスチックです。
- 生分解性プラスチックのポリ乳酸(PLA)
- 高密度ポリエチレン(HDPE)
- 衣料品の化学繊維(アクリル・ナイロン)
HDPEは一般的にボトルやキャリーバッグの材料に使用されるプラスチック。これが土壌中にある状態で30日経過後、ミミズの体重が平均で3.1%減少しました。
一方、HDPEのない土壌のミミズは30日間で体重が5.1%増加。さらにHDPEによって土壌のpHが低下することもわかりました。
PLAを含む土壌ではホソムギの芽の高さが低くなり、PLAと化学繊維の両方を含む土壌ではホソムギの発芽が減少したということです。
つまりHDPEやPLA、化学繊維によって成長が阻害されたことになります。
土の中でもマイクロプラスチックの悪影響が懸念される
今回の調査では具体的な理由はまだわかっておらず、今後さらなる研究が必要です。
ミミズの体重減少については過去に調査された水生のゴカイと同様の可能性があり、マイクロプラスチックを摂取することで消化管が閉塞や炎症を起こし、栄養の吸収が妨げられ、成長が遅くなったということが考えられます。
ミミズは「ecosystem engineer(生態系のエンジニア)」とも呼ばれ、土壌の健康を維持する上で重要なはたらきをする生き物。
土壌中の有機物や微生物をミミズが食べ、糞として排泄することで、植物にとって栄養たっぷりの土が生まれます。
またミミズが土の中を掘り進むことで土壌構造が改善し、排水を助け、土壌の侵食を防ぎます。さらに空気の通り道ができるため微生物の活動も活発になります。
プラスチック汚染によってミミズのような地中動物群の健康が脅かされれば、植物の成長など連鎖的に影響を受ける可能性が大いにあります(Science Daily Sep 2019)。
農業でもマイクロプラスチックが拡散
土壌のプラスチック汚染は、プラごみの埋め立てやポイ捨てだけではありません。農業でもいたるところでプラスチックが使われます。
例えば畑のうねを覆うマルチシート。一般的な材料はポリエチレンです。
雑草の成長を防ぎ、雨による肥料の流れ出しや土壌の侵食を防ぐ一方、太陽光を長時間浴び日中は高温に。光や熱、酸化によって劣化しマイクロプラスチックが発生します。
発芽をコントロールするために種をプラスチックでコーティングすることも。発芽した後もプラスチックは土壌の中に残り続けます。
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