世界の6つの海溝に生息する生き物からマイクロプラスチックを検出

合成繊維のマイクロプラスチック

6つの海溝に住む深海の端脚類(小さなエビに似た甲殻類)から、プラスチックの合成繊維が見つかったことがニューカッスル大学(英)の最新の調査でわかりました(Jamieson et al. 2019)。

さらに、地球上で最も深いマリアナ海溝では、調査した全ての生物から合成繊維が検出されました。

どんな調査?

同大学の研究チームは、過去10年間で集めた水深6,000 ~ 11,000mに生息する多数の端脚類のサンプルを所持しており、その中からプラスチックが検出されるか調査を開始しました。

サンプルを採取した場所は日本海溝、伊豆・小笠原海溝、マリアナ海溝、ケルマデック海溝、ニューヘブリデス海溝、ペルー・チリ海溝(4つの深度)の合計9ヶ所。

水深10kmの深さまでの海を示す地図

太平洋内の広い範囲を網羅しており、地球の最深部である水深約7,000~10,890mのチャレンジャー海淵(マリアナ海溝の一部)も含まれています。

調査の結果

解剖を行なった90匹の端脚類のうち、65匹(72%)からマイクロプラスチック122個が検出されました。

海溝別に見ると、最も少なかったのはニューヘブリディーズ海溝で50%、最も多かったのはマリアナ海溝で100%という驚くべき結果に。深い場所で採取された個体ほど多くのマイクロプラスチックを摂取していました。

さらにマイクロプラスチックを分析したところ、そのほとんどが合成繊維でした。

マイクロプラスチックが検出された端脚類の84%が合成繊維を食べており、そういった個体はどの海溝でも見られました。

深海に生息する端脚類

環太平洋の6つの海溝から採取した3種類のフトヒゲソコエビ上科端脚類。(a) Hirondellea gigas (b) Hirondellea dubia (c) Eurythenes gryllus スケールバー=10mm *は4つ目の節の位置を示す。 A. J. Jamieson , L. S. R. Brooks , W. D. K. Reid , S. B. Piertney , B. E. Narayanaswamy and T. D. Linley (2019) Microplastics and synthetic particles ingested by deep-sea amphipods in six of the deepest marine ecosystems on Earth Royal Society Open Science (CC BY 4.0)

検出された合成繊維

マリアナ海溝の10,890mから採取した両脚類サンプル内に見られる一連の極細繊維の例。A. J. Jamieson , L. S. R. Brooks , W. D. K. Reid , S. B. Piertney , B. E. Narayanaswamy and T. D. Linley (2019) Microplastics and synthetic particles ingested by deep-sea amphipods in six of the deepest marine ecosystems on Earth Royal Society Open Science (CC BY 4.0)

検出されたマイクロプラスチックの内訳

(a)少なくとも1つのマイクロプラスチックを摂取した両脚類の割合。(b)1サンプルあたりの平均摂取数(±sd)。 (c) 色と種類の組成。 (d) 色および粒子の種類をパーセンテージで表した。すべてサイト(および深度)に対してプロットしている(n = 10)。サイトの略語は次のとおり。IBT:伊豆・小笠原海溝。MT:マリアナ海溝。NHT:ニューヘブリデス海溝。KT:ケルマデック海溝。PCT:ペルー・チリ海溝。A. J. Jamieson , L. S. R. Brooks , W. D. K. Reid , S. B. Piertney , B. E. Narayanaswamy and T. D. Linley (2019) Microplastics and synthetic particles ingested by deep-sea amphipods in six of the deepest marine ecosystems on Earth Royal Society Open Science (CC BY 4.0)

プラスチックは海のあらゆる場所に存在する

繊維1つ1つは軽いですが、バクテリアが付着し始めると重さが増し、最終的に海底に沈んでいきます。

海に流れたプラスチックは最終的に海溝に堆積し、それ以上どこかに行くことはありません。

今回調査された6つの海溝は地理的に大きく離れています。

それにも関わらず、全ての海溝の個体からマイクロプラスチックが見られたことを受けて、論文著者のJamieson氏は、「プラスチックはありとあらゆるところに存在すると断言できる。これ以上プラスチックを探す必要はなく、それが生物に及ぼす影響について研究を進めるべき」と述べます。

生物への影響は?

プラスチック汚染は非常に深い海で広範囲に及んでいます。

しかし、実験室で深海の圧力を再現することは困難です。

海の底に生息する生物がプラスチックを摂取するとどうなるのか、その影響を知ることはほぼ不可能であるとJamieson氏は警告します。

プラスチック粒子はほとんどの生物にとっては非常に小さなもので、そのまま体の中を通り抜けて行くかもしれません。

しかし、今回の端脚類や動物プランクトンといった小さな生物ではどうでしょうか。

体内への影響度が変わってくるのは誰の目にも明らかです(PHYS.ORG Feb 2019)。

▽こちらの書籍では海のプラスチックの影響について詳しく紹介しています。