人間が吸う酸素の最大10%を生成する極微小植物プランクトンの一種、プロクロロコッカス。
この小さな植物プランクトンは、プラスチック汚染による悪影響を受けやすいことがマッコーリー大学の調査でわかりました(Tetu et al. 2019)。
光合成で大量の酸素を作り出す「プロクロロコッカス」
海中にも様々な微小プランクトンが存在しています。
プロクロロコッカスという微小プランクトンは、海で最も多く存在するシアノバクテリア。光合成によって増殖し、大量の酸素を生み出しています。
その量は、なんと全世界の酸素の最大10%をも占めると言われているのです!
海洋では光合成によって炭水化物と酸素の生成が絶え間なく行われていますが、このシアノバクテリアによる働きは非常に大きなウェイトを占めています。
もちろん、海の食物網にとっても重要な存在。
研究チームはこの小さな緑色の微生物を対象に、プラスチック汚染との関係について調査を行いました。
プラスチック汚染で損なわれるプロクロロコッカスの数と酸素生成
研究チームは異なる水深で採取したプロクロロコッカスを培養し、それぞれに食料品のプラ袋(高密度ポリエチレン製)とPVC(艶消しされたもの)を晒しました。
どちらも一般的なプラスチック製品。中に含まれる化学物質が浸出し、プロクロロコッカスがばく露されていきます。
結果、プロクロロコッカスの増殖と機能(生成される酸素量)が損なわれただけでなく、多数の遺伝子発現が変化したのです。
(遺伝子発現:遺伝子の情報が細胞構造や機能に変換される過程のこと)
日常生活でも、ペットボトルなどに含まれる添加剤が液体に浸み出すことがわかっています (Greifenstein et al. 2013, Westerhoff et al. 2008)。
海のプラごみからも、同じように添加剤が浸出します。
ただ、プラスチックを誤飲したり漁網に絡まったりする脅威とは異なり、こうした浸出物についてはそれほど注目されていませんでした。
プラ汚染は微生物にも害を及ぼしている
プラスチック汚染は海鳥やウミガメなどの大きな生物だけでなく、目に見えない広範囲な生態系にダメージを与えている可能性があります。
私たちが吸う酸素の10分の1をこのシアノバクテリアが作っているにも関わらず、人間が出す汚染物質によって何が起こっているのかほとんど知られていません。
研究チームのTetu氏は、「海洋環境におけるプラスチック汚染をもっと正しく理解するなら、光合成生物を含む微小プランクトンへの影響にも目を向ける必要がある」と述べています(ScienceDaily May 2019)。