プラスチックごみを減らすための世界の動向

プラスチックごみ

国連は,2022年までに使い捨てプラスチックを含む海洋ごみの主な発生源を排除する国際キャンペーンに乗り出しました(UN environment 2017).

30か国以上が参加しており,国家レベルでの取り組みを進めると公言しています(clean seas).

参加国はベルギー,ブラジル,カナダ,コロンビア,コスタリカ,デンマーク,ドミニカ共和国,エクアドル,フィンランド,フランス,グレナダ,アイスランド,インドネシア,イスラエル,イタリア,ヨルダン,ケニア,キリバス,マダガスカル,モルディブ,オランダ,ノルウェー,パナマ,ペルー,フィリピン,セントルシア,セーシェル,シエラレオネ共和国,スペイン,スウェーデン,ウルグアイそして英国です.

発生源をコントロールする取り組み

スリランカでは,島で一番大きなごみ処理場でゴミが崩れ32人が亡くなるという痛ましい事故をうけ,プラスチック製の袋,コップ,お皿の販売を禁止しました(Phys.org 2017).

スリランカの最大都市であるコロンボでは,道路側溝にプラスチックごみが詰まっていたことが原因で鉄砲水が発生していました.

インドのニューデリーでは,違法にプラスチックごみが燃やされ大気汚染がひどくなり,プラスチック製の食器や袋などを禁止しました(Independent 2017).

海洋プラスチックごみの主な原因の1つが「使い捨てプラスチック」であることは明白になっていますが,残念なことに,使い捨てプラスチックを減らすことが,海洋汚染をどらだけ減らすかについての定量的な研究はほとんど進んでいません(Xanths et al. 2017).

多くの国々が使い捨てプラスチックを減らすための政策を導入していますが,そういった取り組みの効果はほとんど明らかになっていません(Xanths et al. 2017).

ポルトガルでは,食料品店などで無料提供していたプラスチック袋に課税をしたことで,プラスチック袋の消費量を74%も減少させることに成功しました.

しかし,いままで無料でもらっていたプラスチックの袋が家庭のごみ袋として使われなくなったため,代わりに(スーパーで別途購入した)プラスチック製の”本当の”ごみ袋の消費量が12%も増加してしまいました(Martinho et al. 2017).

全体的に見れば悪い交換条件ではないのかもしれませんが,実際のところはどうなのか,さらなる詳細な調査が必要になっています.

アメリカでは,国家レベルでプラスチック製のマイクロビーズの禁止を定めました.2017年の7月からマイクロビーズ入りのケア商品の生産が禁止・終了し,2018年7月から商品の販売も終了します(U.S. Food & Drug).

米国国立公園サービスは2011年にいくつかの国立公園でペットボトルに入った水の販売を中止しましたが,その先立ちはいま保留となっています(The Washington Post 2017).

しかしながら,アメリカの州や地域レベルではすでにいくつも取り組みが進んでいます.例えば,シアトルとワシントンでは2018年7月以降,レストランやカフェ等で使い捨てプラスチックが原則禁止になりました(Seattle Public Utilities).

アメリカのコーヒー文化発祥の地では,特にプラスチックストローの使用をやめようというキャンペーンが盛り上がっています(Strawless in Seattle).

このように,陸で発生するプラスチックごみの防止に取り組んでいる国々がある一方で,海で発生するプラスチックごみにも対策が必要です(Global Gohost Gear Initiative 2017).

海で発生するプラスチックごみで一番問題になっているのが,遺棄された漁網や釣り糸などの漁具です.みんなプラスチックでできています.

政府と企業による行動が不可欠

私たち人類は,プラスチックの大量排出者である一方で,巡り巡ってその廃プラスチックを摂取しているプラスチック汚染の被害者でもあります.

海洋プラスチック汚染の問題を解決するには,個人レベルから企業レベル,政府・地方自治体レベルでできる「あらゆること」を組み合わせて取り組んでいく必要があります.

まずはプラスチックごみが海に入ることを徹底的に阻止しなければなりません.

1度海に入ってしまったプラスチックごみは回収することは極めて困難です.

海に浮かぶゴミを回収するアイデアはたくさん出ている一方で,海底に沈んでしまったプラゴミの回収は現実的ではありません.

まして海底に沈むマイクロプラスチックの回収は不可能です.

海を掃除することは根本的な解決にはなりません.

海ごみの発生源を徹底的にコントロールすることが最大の肝です.

プラスチックごみがゴミ箱から溢れることなく,ポイ捨てされることなく,すべて完全に処理されること.

そして台風や雨風に飛ばされることがないようゴミがきちんと管理されること.

しかし現状は,こういった廃棄物の管理の高度化によってもコントロールができないほどに大量の使い捨てプラスチックが消費・廃棄されています.

ですから廃棄物管理の高度化とともに,プラスチックのそのものの消費・排出を抑制しなければなりません.

しかし,プラスチックの消費と排出をコントロールするのはなかなか厄介な問題です.

なぜならプラスチック製品の製造業についての多くの政策または取り組みが必要になるからです.

プラスチックの生産・製造企業は,プラスチック消費量の削減による解決策を否定するでしょう.

そして単に廃棄物の管理だけに解決を求めます.

たとえば,もっと埋め立て地を増やす,焼却施設を増やす,リサイクルセンターを増やす,ゴミ箱を増やす.そして税金を使ってこれらをやってほしい期待しているでしょう.

プラスチック製品が徐々になくなることやプラスチック製品に追加料金を課すといったことには(プラスチック企業は)基本的に大反対です.