太平洋の探検隊!マイクロプラスチックの詳細なデータ収集を開始

海面近くに漂うプラスチックごみ

大規模な海洋プラスチック汚染の調査が今年5月からスタートしました。

世界の研究者18名からなるチームが、バンクーバーからシンガポールにかけて約1ヶ月間の航海調査を実施。プロジェクト自体は2021年まで行われます(PHYS.ORG May 2019)。

海洋プラスチックごみの予測データを実証する

太平洋を横断する調査航路

海に流れ出る何百万トンものプラスチックごみ。それらは川に流され、風に飛ばされ、排水されるなどして海に入ります。

しかし海に入ったプラスチックがどこに堆積するのか、またそれがどれだけの量なのか詳しいデータはなく、これまでコンピュータによるモデリングや個々の調査データ、空中からの観測に頼っていました。

そこで、UFZ(ドイツの環境研究センター)はMICRO-FATEプロジェクトを立ち上げ、海洋プラスチック汚染の調査を開始。2021年まで続きます。

プロジェクトではドイツ・スウェーデンの研究所や大学の専門家18名からなるチームを結成。5月30日にバンクーバーから太平洋に向けて出航しました。

太平洋で最もごみが集まる北太平洋ごみパッチを含め、航路上のいくつかの地点でサンプルを採取し、7月7日にシンガポールに到着する予定です。

地表水・水柱・海底からのサンプル採取

調査船

専門家たちの主な目的の1つは、表層や水柱、海底からサンプルを収集することです。

特に水柱の研究はこれまで不十分でした。そのため、海中でのプラスチック粒子の垂直分布をより明らかにし、密度や組成、年代、さらに生物の付着状況などを調べる予定です。

また海底から採取した堆積物を分析することで、マイクロプラスチックがどこに沈み集まっていくのか、その手がかりも探ります。

というのも、大部分のプラスチックが海底に堆積しており、海の表面に浮かんでる物は全体の1%に過ぎないという報告もあるからです。

堆積物の分析によってその真偽を確かめ、またそこに含まれる有機汚染物質も調べることでプラスチックが汚染物質の発生源・吸収源であるかを確認したい考えです。

プラスチックの劣化が環境に与える影響を解明

日光に晒されるプラスチックごみ

もう一つの目的は、プラスチックが海洋で劣化することでポリマー構造がどう変化するかを調べること。

これまで実験室レベルでのシミュレーションは行われてきましたが、実際のところはよくわかっていません。

そこで今回の調査では船にステンレスタンクを搭載し、中に入れた海水にプラスチックを晒すことで劣化の過程を調べます。

日射や塩分、気温がプラスチックの劣化に与える影響を明らかにし、実験室での結果をフィールド調査で得たデータで補完したいと専門家らは考えています。

プラスチックに形成されるバイオフィルムが謎を解く鍵?

劣化が進むとプラスチックは徐々に崩壊し、微細な粒子になります。

これらの粒子はバイオフィルムで覆われていきますが、このバイオフィルムが海のプラスチックごみの行き着く先や劣化プロセスを大きく左右するのではないかと専門家らは考えています。

よって、今回このバイオフィルムも同時に分析して、その機能や海洋の物質循環における役割も調べていくとのことです(PHYS.ORG May 2019)。