これまでマイクロプラスチックは、海や川など地表にある水の中で発見されてきましたが、近年その調査フィールドは地下水系にも及び始めています。
最新の調査によると、地下水が通る帯水層中にもマイクロプラスチックが見つかったことが世界で初めて報告されました(Panno et al. 2019)。
どんな調査?
調査はイリノイ州(米)の2つの帯水層に対して行われました。
一つは大都市圏セントルイス近郊の帯水層で、多くの亀裂が走る石灰岩からできています。
もう一つはイリノイ州北西部の農村地帯にある、亀裂の少ない帯水層です。
研究者らはこれらの帯水層を水源とする井戸や湧水から17の地下水サンプルを収集。その内訳は、前者(都会の帯水層)から11サンプル、後者(田舎の帯水層)から6サンプルです。
\ 帯水層とは? /
帯水層とは、地下水で満たされた砂層等の透水性が比較的良い地層であり、一般には地下水取水の対象となり得る地層のことです。また、帯水層は地下水が流れる経路にもなることから、地下水汚染の拡がりを調べる上でも重要です。
(出典:日本地下水学会)
調査でわかったこと
17のサンプルのうち、実に16サンプルでマイクロプラスチックが検出されました。
最も多かったのは大都市セントルイスの地下水で、1Lあたり15.2個のマイクロプラスチック繊維が見つかりました。
今回の調査で判明したマイクロプラスチック濃度は、地下水であるにも関わらずシカゴ周辺の河川での濃度と同程度だったということです。
調査を行なったサステイナブル・テクノロジーセンター(イリノイ州)のスコット氏によると、「地下水は石灰岩の割れ目や隙間を通っており、しばしば道路や埋立地、農業地帯から汚水や雨水が帯水層に入ってくることがある」とのこと。
さらに、調査では家庭用品や衛生用品から出る汚染物質も同時に検出。このことから、マイクロプラスチック繊維は家庭から排出されたものである可能性が高いと言えます。
これから多くの検証が必要
地下水源は世界中で供給される飲料水の25%を占めています。
ただ、今回の結果が何を意味するのか現時点で判断することは困難。人や環境にどんなリスクがあるのか、今のところわかっていません。
「この問題についてはまだまだ多くの検証が必要。地表水と地下水のマイクロプラスチック汚染は、今後何年にも渡って問題になるだろう」とスコット氏は述べています。
ずっとなくならないプラスチック
「洗濯するだけで、何千本ものポリエステル繊維が汚水に流れていくことを想像してみてください。そして、地表水が地下水と密接に作用しあうような帯水層で、こうした水が地下水に漏れ出すことを考えてみてください」と同氏は警告します。
環境中に捨てられたプラスチックはずっと消えることはありません。自然界に残り続けるプラスチックに、今後何年も(私たちの寿命よりはるかに長い時間)目を向けていく必要があるのです。
1940年代以降、63億トンもの廃棄プラスチックが排出され、その79%が埋め立て地や自然環境にあると推定されています。
多くは使い捨てであるにも関わらず、それ自体が自然に還ることはできないのです(Science Daily Jan 2019)。