カリフォルニア大学サンタバーバラ校は、世界で初めてプラスチックのカーボンフットプリントを評価し、その排出量を減らすために必要なことをまとめました(Zheng et al. 2019)。
カーボンフットプリントとは?
「カーボンフットプリント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは特定の商品やサービスについて、ライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス)を二酸化炭素(以下CO2)に換算したものです。
大部分のプラスチックは、その原料(石油)から生産・流通・廃棄のすべてのプロセスを通して、莫大な温室効果ガスを排出しています。
2015年は、プラスチックだけでなんと18億トンものCO2に相当する温室効果ガスが排出されました。
今後も増え続けるプラスチックの需要と温室効果ガス
温暖化防止が叫ばれる今の時代、カーボンフットプリントが小さいものほど歓迎されなければいけません。
それにも関わらず、プラスチックの世界的な需要は今後5年間で約22%増加すると予測されています。
当然、このまま何もしなければ温暖化はどんどん進み、地球の平均気温は着実に上昇していきます。
なんと今の地球の状態を維持するだけでも、温室効果ガスを18%も削減しなくてはならないのです。
最新の調査によると、このまま行けば2050年までに世界の炭素消費の17%をプラスチックが占めると言われています。
ここでいう世界の炭素消費量は、地球の気温上昇が1.5℃を超えないギリギリいっぱいに排出した場合で見積もっています。
そんな中で、プラスチックが占める割合はとても無視できるものではなく、温室効果ガスの排出を増やしてもいい余地などどこにもありません。
プラスチックのカーボンフットプリントを減らす4つの方法
プラスチックのカーボンフットプリントを減らすため、同大学は次の4つの方法を評価しました。
①リサイクルの推進:◯
リサイクルは、おそらく最も簡単な解決策になります。リサイクルすれば、新しいプラスチック原料が使われずにすむからです。
もちろんリサイクルするにも温室効果ガスは排出されますが、新しいプラスチックを使うよりはマシということです。
現在、世界中のプラスチックの90.5%がリサイクルされずに捨てられているのはご存知でしょうか?
こうしたプラスチックを有効に使えば、カーボンフットプリントは確実に減っていきます。
②バイオマスプラスチックの普及:◯
バイオマスプラスチックも温室効果ガスの排出をゆるやかにします。
バイオマスプラスチックとは、トウモロコシや小麦、ジャガイモ、大豆など植物から作られるプラスチック。
100%ではなくとも、原料の一部に使われていてもバイオマスプラスチックと呼ばれます。
原料になる植物は、成長とともに大気中のCO2を取り込みます。バイオマスプラスチックとして使用され廃棄(焼却・堆肥化)される際、その炭素質材料はCO2として外に放出されますが、もともと大気中にあったものなのでプラスマイナスゼロ。これを「カーボンニュートラル」といいます。
こうしたバイオマスプラスチックの需要が増えると、結果的にカーボンフットプリントも小さくなります。
③プラスチックの生産縮小:△
プラスチックの需要の伸びが小さくなると、当然CO2排出量も抑えられます。
しかし、これはあまり現実的ではないと著者は言います。
プラスチックは用途が広く、安価で、どこにでもあるもの。そう簡単に需要が減ることはないからです。
代替素材の開発が進められていますが、残念ながらまだ完全に置き換えられるものは出てきていません。
また、途上国が近代化するにつれ、今の私たちの生活と同じようにプラスチックがあらゆるところに入り込んでいくでしょう。
④再生可能エネルギーへの置き換え:◎
最終的に、プラスチックのライフサイクル全体で使われる化石燃料を再生可能エネルギーに置き換えることが、最も影響力がある方法だと評価されました。
もし100%再生可能エネルギーに移行した場合、理論上ではありますがプラスチックの温室効果ガス排出量を51%削減できると予測しています。
温暖化は止められる?今かなり危機的な状況に立っています
これら4つのアプローチ、どれか1つでも達成できれば温暖化防止につながるのでしょうか?
答えはNoです。たった1つではそれほど大きなインパクトはなく、2つの方法を組み合わせても温室効果ガスはまだ増え続けます。
調査の結果、4つのアプローチ全てを軌道に乗せなければ、将来的に温室効果ガスを削減することはできないという厳しい結論に達しました(Science Daily Apr 2019)。
プラスチックだけにフォーカスして考えても、これだけのことをやらなければ温暖化は防げないという危機的な局面に私たちは立っています。
個人でできることは限りなく小さいと諦めますか?
それとも、少しずつでもプラスチックに頼らない方法を見つけて、周囲に波紋を広げていきますか?
プラなし生活は後者を選びます。