身の回りにあふれるプラスチック
プラスチックは、世界中で最も広く使われている材料の一つです。
私たちの日常生活は、プラスチックに囲まれています。ほとんどの食物や飲み物はプラスチックの容器に入って販売されています。家の中、職場、車の中、通勤電車やバスの中、プラスチックで溢れかえっています。
あなたの使う歯ブラシやスマホのケース、ノートパソコン、メガネ、着ている服でさえプラスチックかも知れません。食事中ですか?今使っている食器やフォークはプラスチックかも知れませんね。 お子さんがいますか?
お子さんの使うオモチャの多くはプラスチックでしょう。身の回りにあるプラスチックを数え上げたらきりがありません。
多様な特性をもつプラスチック
プラスチックは現在の私たちの生活に広く普及しており、ほとんどの製品分野で絶大な貢献をしています。 プラスチックには実用面で素晴らしい特徴があります。
典型的な性質としては、主に軽量で、思い通りの型に変化させることもでき、耐水性があり、頑丈で、コスパもすばらしいです。あるものは化学物質に対して耐久性があり、透明にもできます。
プラスチックは私たちの生活の中で様々な役割を果たして来ました。
もはやプラスチックなしの生活は想像すら不可能でしょう。
一方で、プラスチックの利用は目に余る環境問題を生み出し、また目に見えない健康問題を引き起こしています。
プラスチックが自然環境に廃棄されてしまうと、極めて長い年月にわたって環境中に残存し、生態系に深刻な影響を与えます(UNEP 2005)。
そのため私たちは、プラスチックについて、しっかりとした知識を得ておく必要があるのです。
プラスチックという用語
プラスチック(plastic)という用語は、ギリシャ語の「プラスティコス(plastikos)」に由来します。
「型に入れて作るもの」、「形成されたもの」という意味があります(Liddell et al. 1968)。
プラスチックは型にいれて思い通りの形状に変化させることができます。
プラスチックはよく高分子やポリマーと呼ばれます。プラスチックを作るとき、原料となるモノマー(単量体)をたくさんくっつけて高分子のポリマー(重合体)にします。
例えば、ポリエチレン(PE)なら、エチレンというモノマーを数万個くっつけて(重合させて)、ポリマーにしたのがポリエチレンです。
ポリマーの「ポリ」はたくさんという意味で、モノマーの「モノ」はひとつという意味です。モノマーは、ほとんど常温で気体か液体ですが、これを数万個くっつけると常温で固体になり、いわゆるプラスチックになります。
プラスチックを合成するときに、モノマーの炭化水素をたくさんくっつけるわけですが、この炭化水素は石油や天然ガス、石炭から主に生成されます。
複数形でプラスチックス(plastics)というときは、ポリマー構造を持ち、様々な形に鋳造することができる有機合成化合物のことを指します。
一方、単数形でプラスチック(plastic)という場合は、材料の可塑性(かそせい)を指して使います(Hammer et al. 2012)。
可塑性(かそせい)とは、物質が破砕されることなく形を変えられる特性をいいます。
プラスチックの特質は、基本的にポリマー連鎖の構造配置とその長さで決まります。たとえば、ぎゅうぎゅうに詰まった密度の高いポリマーが固くて丈夫なプラスチックになります。
反対に、密度の低いほうが柔らかくてしなやかなプラスチックになります。
ただし、純粋なポリマーだけでは商品にはならず、様々な化学物質を添加して思い通りの特性をプラスチックに与えます。この添加される化学物質(添加剤とよびます)には、私たちの健康に多大な影響を及ぼすものがいまでも使用されています。