世界のプラスチックの生産量は, 1950年に(化学繊維も含めて)200万トンだったのが,2015年の総生産量は3億8000万トンに激増しました(Geyer et al. 2017).
これは鉄鋼やセメントを除いて,ほとんどの人造物質を上回る増産ペースです.
2008年には世界的な金融危機によりプラスチックの製造は1億5000万トンまで落ちましたが(Gioia et al. 2008),2009年半ばには市場の回復の兆しが見えてきて2.3億トンにまで増加し,2015年の年間製造が3.8億トンです(Geyer et al. 2017).
中国はもっともプラスチックを生産している国の1つで,世界生産のおよそ1/4に相当する量を製造しています.
中国だけで,2015年の時点で7800万トンが生産されました(statista).
さらにヨーロッパ全体では約6000万トンが生産され(2016年時点),アメリカでは2017年に5100万トンが生産されています(statista).
日本では,2016年の時点で1450万トンのプラスチックが生産されました(statista).
人類が作り出した83億トンのプラスチック
1950年から2015年までの間に製造されたプラスチックの総量は78億トンに達します.
そのうち約半分は過去13年間に生産されました(Geyer et al. 2017).
中国だけでもプラスチック樹脂の世界生産の28%を占め,化学繊維(ポリエステル,ポリアミド,アクリル)では68%を占めています.
化学繊維以外のプラスチックでは,最終的な製品にするときに大量の添加剤を加えます.この添加剤も考慮すると,今日までに人類が作り出したプラスチックの総量は83億トンに達します.
もっとも多く作られているプラスチックは,(繊維を除けば)ポリエチレン(36%),ポリプロピレン(21%),ポリ塩化ビニル(12%)です.
ちなみにPETや,ポリウレタン,ポリスチレンがあわせて10%以下を占めています.
世界のプラスチックの生産量の増加は,人口の増加よりも速く上昇しており,つまり個人1人あたりのプラスチックの消費量が増加しています.
プラスチック生産の成長が著しいのが,急速に発展しているアジアの国々です.
プラスチック生産量の爆発的な増加の主な要因は,すばり「包装に使うプラスチック」にあります.
製品の梱包に使うプチプチや発泡スチロールなど緩衝材,食料品の容器,飲料ボトルなどのことです.
事実,包装に使うプラスチックが,プラチック生産量全体の42%を占めています(Geyer et al. 2017).
ほとんどがゴミになりました
今日までに生産されたプラスチック83億トンのうち63億トンがすでに廃棄物となっています.
そのうち,たったの9%だけがリサイクルされ,12%が焼却され,大部分の79%は埋め立て処分されたか,さもなければ海洋などの自然環境に投棄されました(Geyer et al. 2017).
このままの勢いでプラスチックの生産と廃棄が続くと,2050年までに120億トンのプラスチックごみが埋め立て処分されるか,自然環境に投棄されると考えられています(Geyer et al. 2017).
その量は,橫浜ランドマークタワー2万7千個に相当します(ランドマークタワー1つ,44万トンとして計算).
プラスチックの生産量は年間5%増の勢いで増加しており,このままいくと2050年までに累計330億トンのプラスチックが生産される計算です.
海のプラごみが魚の量を超える?
常識的に考えて人類が生み出したプラスチックは,焼却されない限り何百年も何千年も分解されずに環境中に残ります(Barnes et al. 2009).
そのため,2050年までに海に蓄積するプラごみの量は魚を超えると予想されています(World Economic Forum 2016).
生産されたプラスチックが海に入りこむ率は3%と言われています.
計算は単純で、2010年に生産されたプラスチックの総量が2億6500万トン(日本プラスチック工業連盟).
そのうち、およそ800万トンが海に入りこんだと考えられているため(Jambeck et al. 2015),800万トン÷2億6500万トン×100=3%になります.
もし2050年まで生産されるプラスチックの総量(330億トン)の3%が海に入りこむとすれば,その量は約10億トンとなります.
すべての魚類の全生物量(全ての魚の重さの合計)は,およそ8億トンと推定されているので(Wilson et al. 2009),2050年には余裕でプラスチックが魚の量を超えています.
この推定の確かさに意義を唱える人もいますが(BBC News 2016),いずれにせよ大量のプラスチックゴミが海に捨てられることに変わりはありません.