毎年数億トンのプラスチックが生産され、1270万トンのもの大量のプラスチックが海に流れ出ています(Jambeck et al. 2015)。 プラスチックは時に病原体を運んだり、エサと間違って生き物が食べてしまったりと、様々な問題を引き起こしています。
5mm以下の大きさのものをマイクロプラスチックと呼びますが、このような小さなものがどこから来たのか、特定することは困難です。
しかし、NOAA(米国海洋大気庁)の新しいプロジェクトでは、海に漂うプラスチックがもともと何だったのかを特定しようとしています。 プラスチックごみの最も一般的な種類がわかれば、その汚染源を断つことができるからです。
化学的な捜査
海洋ごみの60%以上をプラスチックが占めています(Gewert et al. 2015)。 プラスチックとひとことに言っても様々な種類があり、それぞれ密度が異なります。
例えば、レジ袋はポリエチレン、マーガリンの容器はポリプロピレンでできています。どちらも海水より軽いので海面に浮きます。
一方、他の種類のプラスチックは重いため、水柱より深いところで見られたり、海底に沈んでいたりします。 プラスチックの種類が違えば、汚染物質や病原菌の吸着の仕方も変わります。そのため、異なった毒性を示す可能性があるのです(GESAMP 2015)。
NOAAのチームは、プラごみの種類を特定するため、ガスクロマトグラフィー質量分析法 (GC/MS)を用いて測定。「どの材質のプラスチックが、海洋のどの部分で最も多く見られるか」を調査しようとしています。 この手法は、プラスチックの構成要素をもとに、その材料を特定します。
目標は「プラスチックの参照ライブラリ」を作ること。科学者がプラスチック内から汚染物質を発見した時に、そのプラスチックの材質が何であるか識別できるようにするためです。
現在、メキシコ湾やハワイ、アラスカ、ニュージャージーのビーチで見られる様々なプラスチックが特定されています。
今すぐやるべきこと
海洋生物や海鳥が食べたプラスチックの調査も重要です。
胃の内容物を化学分析することで、どの生物が最も頻繁にプラスチックを食べているのか知ることができます。
NOAAでは、プラごみに含まれる添加剤を確認することで、マイクロプラスチックがどこに由来しているのか調査しようとしています。
これまでの様々な調査で、23万6,000トンのマイクロプラスチックが海の表層に漂っていることがわかっていますが、これは海のプラごみのほんの一部にすぎません。
最近の研究では、ウミガメの赤ちゃんがプラスチックのかけらを飲み込んで、腸閉塞や栄養不足に陥り、死んでいることがわかっています(UGA Today Sep 2018)。 また、2017年からの調査では、マイクロプラスチックを食べた小さな魚が見つかっています(National Geographic Aug 2017)。
このような小さな魚が大きな生物に捕食されることで、プラスチックはその体内に長く留まる可能性があり、汚染物質が蓄積していくのではないかと問題視されています(Savoca et al. 2017)。
NOAAはプラごみの識別によって海洋生物のハビタット(生息地)の管理を強化していこうとしています(EcoWatch Nov 2018)。