海表面に渦に全部たまる?
多くの人は,海に入ったプラスチックごみは,最終的に北太平洋の真ん中に浮かぶゴミの島(グレートパシフィックごみパッチ)に集積すると思っているかもしれせん.
いや,それは大間違いなんです.
確かに,北太平洋の還流の海表面にはたくさんのプラスチックごみが溜まる渦流あります.ゴミの島という表現は間違いで、プラスチックのスープという表現のほうがいいかもしれません.
でも最近の調査によれば,海表面に浮かんでいるプラスチックごみは,海に入りこんだプラスチックごみ全体のごく僅かを占めるに過ぎず(全体の1%以下!),ほとんどは海底に沈んでいるのではないかと疑われています(UNEP & GRID-Arendal 2016).
行方不明プラスチックはどこへ?
実際のところ,海のどこにプラスチックがあるのかと質問するのはナンセンスで(プラスチックごみは海のどこにでもあります!),むしろプラスチックごみのない海はまだあるのだろうか?と疑問を投げかけるべきかもしれません.
ある研究では,合成繊維に由来する繊維状のマイクロプラスチック(マイクロプラスチックファイバー)が大西洋や地中海そしてインド洋の深海の堆積物中から大量に見つかりました(Woodall et al. 2014).
これは海表面に存在しているマイクロプラスチックファイバーのおよそ4倍にもなります.マイクロプラスチックファイバーは,ポリエステルのフリースジャケットを洗濯する度に大量に放出されていきます.
私たちは最近になってやっと,マイクロプラスチックファイバーがどこにでも普遍的に存在し,周囲を汚染していることに気が付き始めました.
水道水や飲料ボトルにだってマイクロプラスチックファイバーが混入しています(The Gardian 2018). 海洋に存在するマイクロプラスチックファイバーは,海底に沈んでしまったプラスチックと同じく,「行方不明プラスチック(the missing plastics)」の疑問に答えるカギを握っているかも知れません.
海に隅々に広がるマイクロプラスチック汚染
私たちは海に捨てられたプラスチックの量を知っていますが,海を実際に調べてもほとんどプラスチックごみが見つからず,大部分のプラスチックは文字通り「失われた(=どこかにいった)」と考えられています.
マイクロプラスチックは海底の堆積物の中に存在しているだけでなく,深海生物の体の中にも存在しています.
ある研究によれば,マイクロプラスチックファイバーは,深海の懸濁物食動物,堆積物食動物,腐食動物,捕食動物によって摂餌されていたことがわかりました(Taylor et al. 2016).
別の研究は,北大西洋のロッコールトラフの水深2,200メートル以深に生息する無脊椎動物のほぼ半数がマイクロプラスチックを摂餌していたことを報告しました(Courtene-Jones et al. 2017).
南極からも北極からも
北に目を向けてみましょう.北極の海域ではプラスチックごみがそれほど多くない一方で,グリーンランドとバレンツ海にはかなり存在しています(Cózar et al. 2017).これはおそらく北大西洋からの輸送によるものと考えられています.
さらにここから下方向に輸送される可能性があるので,北極エリアの海底のどこかにたくさんのプラスチックごみが集積しているかもしません.そして「失われたプラスチック」の在処の一部となっているかもしれません.
今度は南極に目を向けてみましょう.予想通りというか,やはり南極海もプラスチックで汚染されていました.南極海の海底の堆積物と海表面からマイクロプラスチックが見つかっています(Waller et al. 2017, Isobe et al. 2017).
もはや原始の海でもなんでもありません.
もう1つ点,大事な報告があります. 地球上で最も大陸から遠く離れた孤島の一つ,南太平洋ピトケアン諸島のヘンダーソン島では,無人島であるにも関わらず,その浜辺には推定3,770万個ものプラスチックごみが散らばっていました(Lavers & Bond 2017).
もはやプラスチックごみから逃げられる場所はなさそうです.