結論から言えば,全てのプラスチックごみを除去することはもう不可能です.
大部分は深海に沈んでしまったと言われていますし,小さく微細化したマイクロプラスチックやナノプラスチックの回収は極めて困難です.
これ以上状況を悪化させないために,プラスチックごみが海に流入しないように対策を立てるしかないでしょう.
お金をかけても不可能
最近の報告によれば,海底に沈んだプラスチックごみの世界平均量は〜70 kg/㎢,海の表層を漂流するプラスチックごみは平均して1 kg/㎢以下(あの悪名高い北太平洋環流でも最大18 kg/㎢ほど),そして浜辺に打ち上がっているプラスチックごみが平均で2,000 kg/㎢となっています(Eunomia 2016).
というわけで,太平洋に浮かぶプラスチックごみを回収する装置を大金を出して設置するよりも,河口付近にゴミをトラップする装置を設置したり(Willis et al. 2017),ビーチクリーンアップをする方が費用対効果が高いと言えます.
それに,外洋のプラスチックごみを回収する試みは費用以外の問題もたくさん抱えています(Stokstad 2017).
海の清掃には,お金と時間と労力がとてもかかります.
またいくらお金をかけても,海底にあるマイクロプラスチックの回収はもはや不可能です.
したがってプラスチックがこれ以上海に入ることを防止する対策をとることと,プラスチックが必要な場合はすべて海で生物分解が可能なプラスチックにするべきです.
掃除よりもまずは排出源をコントロール
とにかく,ほとんどのプラスチックごみは陸で発生しているため,陸から海に流れ込まないようにすることが先です(McKinsey & Company and Ocean Conservancy 2015).
発生源から対処しないと意味がありません(Wu et al. 2017).
1970年代に大気汚染が世界的に問題となったとき,ある人達は街のビルのうえに巨大な掃除機を取り付けて汚染された空気を吸い込めば良いと言っていました.
いやいや,そうじゃなくてまずは汚染された空気の排出源をコントロールするべきでしょと言う人もいました.
結局その後にできた法律で,車や工場から排出される汚染物質がコントロールされるようになり,それは成功しています.
海のプラスチックごみは,いま急速に微細化してマイクロ・ナノプラスチックとなり,大気汚染と同じように海にまん延しています.
海を掃除することは根本的な解決にはなりません.
浜辺・ビーチの清掃は,海洋にプラスチックごみが流出することを防ぐための最低限の効果しか生み出していないと言われています.
プラスチック製品を大量に作る大企業が出資している海のクリーンアップは,発生源を止めることに比べれば気晴らしみたいなものです.
まずは最大の発生源である陸からのプラスチックごみをコントロールするべきです(Jambeck et al. 2015).
そこにはプラスチック漬け社会の見直しが含まれていることは言うまでもありません.