ごみを食べる水車が海洋プラスチックごみを根元からシャットアウト!

Mr. Trash Wheelの外観

米国メリーランド州のボルチモア市でテスト運転されているプラスチックごみ回収装置の動画を見てください。

このごみを食べる水車は、川の水流と浮きロープを使って、プラスチックや他のごみを集め、すくい上げ、ごみ箱に回収する装置です。とても簡単で、極めて効果的です。

ゴミを食べる水車

Mr. Trash Wheel

ボルチモア市は、ひそかに水車とソーラー電池で動き、ごみを食べるフラットボートを作り、チェサピーク湾に流れ込むJones Falls川の河口に設置しました(Waterfront Partnership of Baltimore)。

この水車はClearwater Mills社の発明品で、Mr. Trash Wheelという名前が付いています(2017年からは改良版のProfessor Trash Wheelになりました)。

これが、湾に流れ込むはずだったごみを1日に数百キロ〜何トンも外に運び出しています。2008年に最初に行われたテスト水車は3ヶ月で約58トンを回収しました(Waterfront Partnership of Baltimore)。

Mr. Trash Wheelのごみ回収用の熊手

浮きロープによって1カ所に集められたごみが熊手ですくい上げられ、ベルトコンベアーにのせられる

水車は一連の熊手を動かし、熊手が川を浮遊するごみをすくい上げてベルトコンベアーに乗せ、用意されたごみ箱に回収します。

岸から浮きロープが張られているので、川を流れる全ての浮遊ごみはこの「ごみ回収水車」に向かって流れ、水車を通ってから海に流れることになります。

Mr. Trash Wheelの外見

ベルトコンベアーで運ばれたごみは、後に設置されたごみ箱へ

大雨が降った日には、なんと1日に19トンのごみを集めることができました(Mr. Trash Wheel)。

ごみがいっぱいになったら、別の場所にごみを運ぶことが出来ます。

この「ごみ回収水車」のいいところは、人々の目につくところに堂々と設置されていることです。

メリーランド州で一番交通量の多い場所に設置されています。

通行人はごみ回収マシンを目にし、その日のうちに川からどれだけたくさんのごみがすくい上げられたかを実際に見ることができます。これは思っているより重要なことです。

なぜなら海のごみを減らす真の解決法は、クリーンアップ(清掃)よりも、まずごみを出さない、捨てないことだからです。

外洋に浮かぶプラごみ回収装置が効率悪い理由

岸から何千キロも離れた太平洋ごみベルトに浮遊式のプラスチックごみ回収装置を設置する話しがTEDで話題になっていますが、あれは効率悪いはずです。

広い海に長い浮きロープを張って表面に浮かぶプラごみを回収するものですが(The Ocean Cleanup)、私たちが捨てているプラスチックごみ全体のほんの僅かしか集められないからです。

プラスチックごみが広い海に入ってしまってからでは、時すでに遅しです。

海に入ったプラごみの全部が浮いて太平洋ごみベルトなどのジャイア(環流)に流れ着くわけではありません。

海に入ったプラごみは、約半分は沈み、一部は岸に打ち上げられ、また一部は海流に流されて広い外洋の表層に集積します。

大陽の紫外線と熱によって劣化し、摩耗によって砕け、広い外洋にたどり着く頃には、一部は小さなマイクロプラスチックという微細な破片になっているでしょう(Andrady 2017)。

マイクロプラスチックなってしまったら回収は極めて困難です。 プ

ラスチックごみが太平洋ごみベルトにやってくるまでに多くがマイクロプラスチックになりなんらかの理由で沈む可能性があります。

外洋に設置される浮遊式のごみ回収装置は、嵐などで紛失する恐れがありますし、何より莫大な資金が必要です。

そもそも外洋にあったら、見ることもないし、一般の人々はプラスチックごみがどうなるかなんて気にしないでしょう。

1つ忘れてはならないことは、広い外洋に集積しているプラスチックごみは、これまで海に入りこんだプラごみのたかだか1%以下でしかないという事実です(UNEP & GRID-Arendal 2016)。

広い外洋に浮かぶプラごみを回収する試みは、ただ症状を(ごく僅かに)緩和するだけで、癌そのものを治すわけではありません。

ごみを根元からシャットアウト

Mr. Trash Wheelの外観

バルチモアでテスト運転しているごみ回収水車は、主要な川の河口に設置することで、川全体を流れるプラスチックごみを集め、ごみが海に流れ出る前に取り除くことができます。

これが重要です。河口で回転し続け、(少なくとも浮遊する)プラスチックごみが海に入らないようにしてくれます。

もちろん、すべての河口が設置条件をクリアできるわけではないでしょうが(船の通行など)、理想的には、すべての河口にごみ回収水車が設置され、プラスチックごみが海に入らないようにするべきです。

東京湾に流れ込む荒川は、大量のごみが見つかる場所として有名ですが(荒川クリーンエイド)、試しに荒川の河口にごみ回収水車を設置してみるのも良いかもしれません。

超効率よくごみを回収できるはずです(それも毎日)。