海のプラごみ、ストローよりもタバコ吸い殻のほうが問題!?

ビーチに落ちているタバコ吸い殻

ストローがウミガメの鼻に刺さっている生々しい映像を皮切りにして、海のプラスチック汚染を止めるために、ストローの廃止・禁止のブームが日本でも世界中でも起きています。

スターバックスやマクドナルド、日本ではすかいらーく系列でプラスチックのストローの削減・廃止などが謳われるようになりました。 プラスチックのレジ袋(ポリ袋)を廃止した国・地域もありますし、食べられるスプーン・フォークなどもでてきました。

ストローの次はタバコの吸い殻?

次のターゲットはなんでしょうか。

実は、海のプラスチック汚染を止めるためにまっさきに手を打たないといけないプラごみの1つが、「タバコの吸い殻」なんです。

たばこのフィルターは、1種のプラスチックです。

「たばこの吸い殻」は、浜辺を散策して最も多く見つかるゴミの1つです。小さいですが、その数は膨大で、ストローよりも多く、どこでも見つかります。

世界中で行われているビーチのクリーンアップ(清掃)キャンペーンで回収されるごみのNo. 1はたいていタバコの吸い殻です。2017年には、世界中の浜辺で240万本回収されました(Ocean Conservancy 2018)。

タバコの吸い殻が散らばっている様子

たばこのフィルターはプラスチックの1種

たばこのフィルターは、実はプラスチックの1種です。セルロースアセテート(アセチルセルロースまたはアセテート繊維)という、セルロースを原料にした半合成繊維です。

厳密には主原料を石油とするプラスチックと異なりますが、簡単に自然には分解されないという点でプラスチックと同じです。

1本のフィルターは、15,000本以上の化学繊維で作られています。繊維の直径はおよそ20マイクロメートル(Hon 1997Novotny & Slaughter 2014)。

吸い殻のフィルターは、やがてボロボロになって、繊維状のマイクロプラスチックとなり、海中に散らばるでしょう。

さらにフィルターに含まれる有害な物質までまき散らかしていきます。

タバコのフィルターには、ヒ素, 鉛, ニコチンのような有害物質をはじめ、7000種類以上の有害物質が含まれています(WHO 2017)。そして毎年かなりの量の有害な重金属が、たばこのせいで海洋に溶け込んでいると考えられています(Dobaradaran et al. 2017)。

たばこのフィルターが、どの程度、海洋生物や生態系に影響を与えるのか、まだよくわかっていません。いくつかの研究によれば、1リットルの水(または海水)に1本の吸い殻をいれると、実験に使ったミジンコや魚の半数が死んでしまいます(Micevska et al. 2006, Slaughter et al. 2011)。

ゴカイの仲間を使った研究によれば、タバコ吸い殻のフィルターを、水1リットルあたりにフィルター2個分で、そこに含まれているニコチンなどの有害物質がゴカイの仲間の行動に影響を与え、体重の減少とDNA損傷のリスク増大を引き起こしていたと報告しています(Wright et al. 2015)。

フィルターに由来するマイクロプラスチックファイバー(繊維)そのものにが海洋生物に与える影響についてまだよくわかっていませんが、今後、調査報告がでてくるでしょう。

ビーチに落ちているタバコ吸い殻

増え続けるフィルターの消費とポイ捨て

タバコのフィルターは、タバコ会社の単なるマーケティングの道具です(Harris 2011)。フィルターがあることで、たばこを少しでも「健康」に見せかけて、たくさん売るための宣伝道具になっています(World Health Organization (WHO) 2017)。

2002年には、世界中でおよそ5兆6000億本のフィルター付きのタバコが販売・消費されました(Novotny et al. 2009)。

その数字は増え続け、2012年には、6兆2500億本になりました(WHO 2017)。 なんと年間に4兆5000億本が、ポイ捨てなど不用意に捨てられていると推定されており、フィルターの重さに換算すると、75万トン以上になります(Novotny et al. 2014)。

どうやったらこの問題を解決できる?

原因は主にポイ捨てです。

投げ捨てられる、ビーチの砂に突っ込んで火を消し、そのまま差しっぱなし。。。そのまま流されて、海に入ります。

海辺だけの問題ではありません、街中でポイ捨てされた吸い殻は、風に運ばれ、雨水に流され、やがて川を通じて海に流れ込みます。

ペットボトルを車窓からポイ捨てする人は少ないですが、たばこをポイ捨てする人は多くいます。小さいから抵抗が少ないのかもしれません。

タバコのフィルターが海でも分解されるようにと、生分解性のフィルターを使おうという動きもあり、実際に亜麻や麻、綿などの天然素材で作られたフィルターが存在しています(Greenbutts)。

それでも海に流れてしまえば、ニコチンなどの有害物質を海にまき散らかすことに変わりはありませんし、「生分解性なら環境にいいから捨てても大丈夫」といった誤った意識を喫煙者に与えかねません。

EUではタバコ製造業者にポイ捨てされたタバコの回収費用や、プラスチックが入っていることを知らしめるパッケージ表示を求めています。 しかし、どれも根本的な解決にはなりません。

ポイ捨てしない。ポータブルの灰皿を携帯してそこに捨てる。愛煙家1人1人の意識が、海のプラスチック問題と直結しています。