海洋ごみ排出ワースト1位は中国,2位はインドネシア

大量のプラごみ

2億7500万トン。

これが世界中で年間に(2010年の時点で)生み出されたプラスチックごみの重さです.

そのうち480万から1270万トン(中間値は800万トン)が海に入りこみ,海洋ごみになったと推定されています(Jambeck et al. 2015).

この800万トンの海洋ごみについて報告したレポートは,海に接する192国の海岸線から50km以内の都市から排出されるプラスチックごみの量を調べ,管理が行き届いていないごみの排出量をランキングしています.

下の図がその結果です.

なんとワースト20位の中に,アジアの国が12国もランクインしていました(Jambeck et al. 2015).

管理不足ごみの世界地図

世界各国のプラごみ排出量と管理できていないごみの量.丸の大きさがプラごみの排出量を示し,そのうち赤い部分が管理できていないプラごみの割合.中国と東南アジアで管理できていないごみ量が多いことが分かる.各国の色は沿岸域の人口を示し,色が濃いほど人口が多い.Source: GRID Arendal/Flickr (CC BY-NC-SA 2.0)

ワースト1位は人口の最も多い中国でした.

中国の沿岸域からは,年間推定882万トンのプラスチックごみが管理されずに排出されました(2010年の時点).

これは世界の管理不行き届きプラスチックごみの27.7%に相当します(ほとんど1/4).

中国から132万トンから353万トンのプラスチックごみが,1年間の間に海に流れ込んだと推定されています(Jambeck et al. 2015).

目立つ中国と東南アジア

実は中国は,無料のレジ袋(ポリ袋)の配布をやめるなど,ごみを減らす努力はしています(Xanthos & Walker 2017).

それでもやはり人口が多すぎて廃棄物の管理が行き届いていないのが実態です.

ワースト2位は人口が世界で4番目に多いインドネシアで,沿岸域から322万トンのプラスチックごみが管理されずに排出されました.

そのうち48万トンから129万トンのプラスチックごみが海に流れ込みました(Jambeck et al. 2015).

ワースト20位に入っている国の多くは急速に成長を続ける中間所得国で,それらの国は沿岸域に人口が集中しており,ごみの管理も不十分で,インフラの整備もままならない国々が占めています.

海洋ごみの排出ワースト20位国

1位 中国(882万トン)
2位 インドネシア(322万トン)
3位 フィリピン(188万トン)
4位 ベトナム(183万トン)
5位 スリランカ(159万トン)
6位 タイ(103万トン)
7位 エジプト(97万トン)
8位 マレーシア(94万トン)
9位 ナイジェリア(85万トン)
10位 バングラデッシュ(79万トン)
11位 南アフリカ(63万トン)
12位 インド(60万トン)
13位 アルジェリア(52万トン)
14位 トルコ(49万トン)
15位 パキスタン(48万トン)
16位 ブラジル(47万トン)
17位 ミャンマー(46万トン)
18位 モロッコ(31万トン)
19位 北朝鮮(30万トン)
20位 アメリカ合衆国(28万トン)
2010年における推定.
( )の中は推定される最大値.Data from Jambeck et al. 2015.

「管理が行き届いていない」とは,ごみが環境中に漏れ出さないように工夫されていない,すざんな管理システムを指します.

たとえば,ごみ収集車が廃棄物を運ぶとき,普通,ごみが飛ばされないようにカバーがされているべきです.

ワーストランキングに入る多くの国々ではそうでないことが多く,トラックの荷台にごみをのせ,カバーもせずに走り,ごみが飛ばされて最後は海にたどり着きます(Elias 2017).

アメリカはごみの管理が行き届いているほうですが,それでもワースト20位に入っているのは理由があります.

それは沿岸域に人口が集中していること,そして比較的裕福な国であるため個人1人あたりのプラスチック消費量が多いためです.

残念なことに,世界中のごみ処理・管理の能力は急速に排出されるプラスチックごみに追いついていません.

プラスチックの生産は人口の増加とともに爆発的に増えており,同時に海に捨てられるプラスチックごみの量も増えています.

2050年には海に入りこむプラスチックの重さは,魚の総重量を超えると予想されています(World Economic Forum 2016).

6割を占める使い捨てプラ

行政や企業は率先してプラスチックごみの問題に取り組む必要があります.

しかし私たち消費者にも責任があります.

なぜなら海に捨てられるプラスチックごみのナンバーワン1は『使い捨てプラスチック』だからです(Hopewell et a. 2009).

レジ袋,使い捨てプラスチックのスプーン,フォーク,ペットボトル.どれも使った覚えがあるでしょう.

タバコの吸い殻もそうです(タバコのフィルターは1種のプラスチックで,海ではほとんど分解されません).

実は,プラスチックごみ全体の6割以上を,使い捨てプラスチックが占めています(Hopewell et a. 2009).

そのため1回限りの使用で捨てられてしまう使い捨てプラスチック製品と包装を社会から抹消しなければ,海の汚染は計り知れないことになると警告されています.