プラスチックの材料や添加剤として使われるBPA(ビスフェノールA)。環境ホルモン問題のきっかけになった化学物質です。
BPAはポリカボネートやエポキシ樹脂の原料として使用されるほか、プラスチックの安定剤などの添加剤として使用されます。
毎年、数百万トンのBPAが生産されていて、2023年には生産量が740万トンを超える見込みです(CISION 2018)。
BPAは、様々な研究によって健康上の問題が指摘されている工業用の化学物質です。
プラスチックの食品パッケージや飲料缶の内側コーティング、缶詰の内側のコーティング、エポキシ塗料などに使われています。
欧米では”BPA-free(EPAフリー)”と表示された商品をよく見かけます。なぜなら、実際に気にしている人が多いからです。
BPAに触れることを避けるのはほぼ不可能だととも言われています。カナダ政府の発表によると2007年から2009年の間に行われた研究で、6歳から79歳までの人口の91%の尿からBPAが検出されました(Statcan 2015)。
健康にどのような影響があるのか、それを避けるにはどうすればいいのかお伝えします。
BPAの健康への影響?
BPAの毒性については色々と議論されていますが、いくつかの研究では避けるべき説得力ある報告が出ています。
例えば、2015年の研究によると、BPAとホルモンのかく乱には関係性があることが報告されており、具体的には内分泌疾患や不妊症、男性の精子の減少、さらには乳がんや前立腺がんにつながる可能性が示唆されています(Konieczna et al. 2015)。いわゆる環境ホルモンです。
別の研究では、BPAは体の代謝機能を混乱させ、肥満や糖尿病、さらには心血管疾患を引き起こす可能性があると報告されています(Fenichel et al. 2013)。
FDA(アメリカの食品医薬品局)はBPAを含んだ製品への偏見をなくしていこうとしていますが、国立衛生研究所(NIEHS)では、プラスチックに含まれるBPAやその他の化学物質が、人間の健康に長期に渡って悪影響を及ぼすことを示す多くの研究報告を行っています。
BPAはどうやって体に入る?
NIEHSによると、BPAが人の体に入る最大の要因は「食事」であるといいます。
食品の包装や飲料ボトルに含まれる化学物質は、熱や浸み出しによって食品に移行していきます。
BPAが含まれる樹脂は、古くなったり、温められたり、凍らせたり、洗剤で洗ったり、油性や酸性の食品や液体に触れることにより、より多くのBPAを浸出させると言われています。
BPAの浸出は油性や酸性である缶詰の食品で特に気を付けなければいけません。
それを食べたり飲んだりすることで消化とともに体内にBPAが運ばれ、ホルモンや代謝に影響し始めます。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が行なった研究によると、6歳以上を対象に調査した2,517人のうち実に93%の人から検出可能レベルのBPAが確認されました(Calafat et al. 2008)。
また、母乳中にも検出されていることから、妊娠中だけでなく出生後も胎児に間接的な影響が及ぶことがわかっています。
また少量のBPAであっても乳がんにかかるリスクが高まることがわかっています(Wang et al. 2017)。そして他にも多くの悪影響があることから、できる限りBPAに触れないように気を付けることをお勧めします。
BPAフリーの落とし穴
BPAが問題のある化学物質として認識されていることから、BPAフリー製品が市場に出てくるようになりました。
しかし、BPAの代わりにビスフェノールSやビスフェノールF、ポリエーテルスルホンなどが使われるようになり、BPAフリー製品が必ずしも安全であるという保証はありません。
ある研究によれば、いくつかのBPAフリー製品の中にはBPAが含まれるプラスチック製品よりも多くエストロゲンを活性化させるものもあることがわかっています(Yang et al. 2011)。
事実、ビスフェノールS(BPS)はBPAより更にホルモンかく乱作用があることが明らかになっています(Viñas & Watson 2013)。
BPAを防ぐ方法?
Silent Spring Institute(女性の健康と環境化学物質との関連性を特定・解明する研究機関)は、BPAを日常的に避けるための方法をいくつか提供しています。(Tip Sheet:食品中のBPAとフタル酸エステルを避ける6つの簡単なステップ)。
1つ目は、新鮮な生鮮食品や冷凍された食品を選ぶこと。
Silent SpringがBCPP(乳がん予防団体)と行なった調査によると、プラスチック包装された食品の摂取量を減らすと、BPAレベルが減少することがわかりました。
逆に包装食品の消費が上がると、すぐにBPAレベルも上がるという結果も得られています。
日本のスーパーではほとんどの食品がプラ包装ですが、パッケージされたお惣菜やレトルト食品を避け、バラで売られている野菜や果物、量り売りの肉・魚が手に入るなら積極的に選んでください。
2つ目は、外食をなるべく避けて自宅で食事をすること。
外食の頻度が高い人ほど高レベルのBPAが検出されており、新鮮な食材を使って自宅で料理することが推奨されています。
もし外食するなら、地場産の新鮮な食材を使うお店を見つけておくといいですね。
3つ目は、食品をステンレスやガラス製の容器で保存すること。
プラスチック容器に入った食品や飲み物は、容器から化学物質が移行する可能性があります。
特に、脂っこいものや酸っぱい食品はその危険性が高まるため、プラスチックは避けてください。
「メイソンジャー」を普段の料理に♪ プラ製タッパーはもういらない
4つ目は、食品をプラスチック容器に入れたまま電子レンジで加熱しないこと。
温度が高まるほど、食品に移る化学物質は増えていきます。
電子レンジで温める場合は耐熱ガラスや陶器の入れ物を使うか、トースターやオーブンで温めるようにしてください。
5つ目は、電気式のコーヒーメーカーを避けること。
こういった自動コーヒーメーカーには、プラスチックや内部の注水チューブにBPAやフタル酸エステルが含まれています。フレンチプレスやドリップ式で淹れることをお勧めします。
6つ目は、自分一人ではなく、周囲にも呼びかけて行動を起こしていくこと。
日本ではまだ専門的な取り組みはありませんが、米国ではBreast Cancer FundやSafer Chemicals, Healthy Familiesといった団体が食品包装や製品から化学物質を排除する取り組みをリードしています。
[…] 情報元:The Guardian Forge Recycling monoセレクト プラなし生活 […]