毎年膨大な量のプラスチックごみが廃棄され、海洋へたどり着いています。
半世紀前、海で見つかるほとんどのごみは木などの有機物でした。
しかし、今ではほとんどがプラスチックにとって代わられました。
海はどこもかしこもプラスチックごみであふれています。
シービン(Seabin)
この問題に挑戦するために開発された技術の1つが「シービン(Seabin)」です。
シービンは、その名が示すように、波止場に設置されたゴミ箱(bin)で、海面に浮かぶごみを吸い込みます (SEABIN PROJECT)。
最初に、イギリスのPortsmouth ハーバーにシービンが設置され、その後も続々と設置場所が増えています。
シービンの仕組み
シービンは、大きなネット(網)と水を吸い込む水中ポンプで構成されています。
ポンプを使ってゴミ箱に流れ込む水流を作り出し、周りにあるごみの破片をゴミ箱内に設置されたネットに取り込む仕組みになっています。
1時間に濾過できる水の量は25000リットル(風呂桶200杯以上) です (SEABIN PROJECT)。
1日に1.5キロのごみ片を取り除くことができ、中のネットは最大で20キロまで回収することができます。
シービン1つで毎年半トンの海ごみを取り除けると見積もられており、これはペットボトル16,500本、レジ袋90,000枚に相当する量です。
この特殊なゴミ箱は、直径1mm程度のマイクロプラスチックや直径300ミクロン程度のマイクロファイバーから、大きなものでは20リットル容器ほどの大きなごみまで集めることができます (SEABIN PROJECT)。
ただしさすがに20リットル容器は大きすぎてごみ箱の中には入らないので、水流に引き寄せられてごみ箱の周りにくっついているようです。シービンはどこに設置される?
さらに、水の表面を浮く油も回収することができるので、油の流出といった事態には、貴重な新技術といえるでしょう。
マリーナやヨットハーバーではしばし燃料となる油が漏れて海面に浮いています。
シービンはこのような海面に浮いた油も、広い外洋に流れてしまう前に取り除くことができます。
もちろん海を浮遊する全てのごみを取ることはできません。
回収できるごみの量も天候に左右されますし、周りの汚染具合にもよります。
シービンは、波止場、港など、風や波によって、たくさんのごみが集積する閉鎖的な湾に設置されるものなのです (SEABIN PROJECT)。多くのプラスチックごみが港や波止場にもたくさん集積します。
取り除かなければ、やがて広い海へ流れていくでしょう。
そうなってから回収するのはほぼ不可能です。無駄にする時間はありません。
もしそのままにしておけば、海洋プラスチックごみは、生物を傷つけ、飢えさせ、また生物が(ごみを誤食して)有害な化学物質を取り込んでしまいます。
そして最終的には私たちの食料や水の中にも混入してくるでしょう。
ゴミを拾うよりも格段に効率が良い
このようなプラスチックごみを集める技術が地球のいたるところで採用されれば、私たちが今直面している世界規模の問題の解決に貢献することは間違いありません。
もちろん、プラスチックの大量生産の締め付けと廃棄物処理の高度化が最優先なのは言うまでもありませんが。
価格は3300ユーロ(約43万円)から (SEABIN PROJECT)。
人が直接ゴミを拾って掃除することに比べたら格段に効率的ですし、24時間ずっと働き続けてくれます。
必要な作業は、ゴミ箱の中を時々覗いて、いっぱいになる前に、ネットを持ち上げてごみ箱を空にする作業だけ。中をのぞけば、どんなゴミがこの場所に多いか一目でわかります。
ちなみに、ネットはリサイクルされたプラスチックでできています。