世界でプラスチックのリサイクル率が低い5つの理由&日本の現状

プラスチックと埋め立て地

作られるプラスチックの量が増えれば、当然、捨てるプラスチックごみの量も増えます。今日、私たちが排出している廃棄物のうち、プラスチックは重さにして2割〜5割を占めています。

プラスチックごみは「分別して捨てているし、きちんとリサイクルされているでしょ?」と思うかも知れません。しかし、プラスチック生産量の全体から見れば、リサイクル率は極めて低いのです。

91%のプラスチックはリサイクルされていない現実

今のところ、プラスチックごみを分別回収してリサイクルしている率は、世界全体でみると製造されたプラスチックのたったの9%しかありません(Geyer et al. 2017)。

これまでに人類が生み出したプラスチックは1950年から2016年の間に83億トンもあります。重さにして東京スカイツリーが20万個分のプラスチックが生産されてきたわけです。

しかし、ほとんどがごみになりました。すでに63億トンが捨てられたのです。重さにして東京スカイツリー15万個分がごみになりました(Geyer et al. 2017)。

ごみとなったプラスチックは、リサイクルされるか、焼却されるか、あるいは埋め立て地に行きます。さもなければ海などの環境中に散乱します。

「プラスチックはリサイクル」なんて言葉が飛び交っていますが、世界的にみて91%のプラスチックはリサイクルされていないのが現状です。

91%のうち、焼却された割合は12%で、残り大部分の79%は埋め立て処分されたか、もしくは環境中に漏れ出てしまったとされています(Geyer et al. 2017)。

リサイクル率が低い5つの理由

では、どうしてこんなにもリサイクル率が低いのでしょうか?

1. コストと劣化の問題

本来プラスチックは細断して溶かすことで、また新しいプラスチックに生まれ変わります。しかしリサイクルされたプラスチック製品がまた同じ製品として生まれ変わることはほとんどありません。たとえば、PETボトルが再びボトルに戻ること(ボトルto ボトル)はほとんどありません。技術的には可能ですがコストがかかるからです。

それに透明でクリアなボトルから再び透明なボトルを作ることはなかなか難しいんです。リサイクルの過程で不純物が混じり、質が落ちるからです。中身がクリアに見えるボトルでないと消費者は買ってくれないから、結局、新しいペットボトルが作られています。

プラスチックは、リサイクルするたびに劣化していくものです。そのため、リサイクルされた製品は「品質が落ちた」ものになります。たとえば、PETボトルのリサイクルでは、大抵はぬいぐるみの中綿やフリースなどに使われるポリエステル繊維に変わります。

これはリサイクルというより、ダウンサイクルと言います。なぜならポリエステル繊維となって「品質の落ちたPET」は、その先リサイクルされることなく処分されるのがオチだからです。ある意味、ワンウェイです。

2. 同じ材質を集めないといけない

また一言にプラスチックといっても、たくさんの種類(材質)があります。ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなど様々です。しかしポリエチレンからはポリエチレンしか作れません。ポリエチレンをリサイクルするにはポリエチレンだけを集める必要があるのです。

しかし、ごみ箱をあけると、材質がごちゃまぜになって捨てられるため、いちいちプラスチックを材質別に選別しないといけません。人が手作業で分別するのが一般的ですが、これは骨が折れる作業です。

海外では分別をしやすくしてリサイクルを促進するために製品に1番から7番の樹脂識別コードを表示させています。PETなら1番、高密度ポリエチレンは2番、ポリスチレンは6番といった具合です。そのため海外から輸入されるプラスチック製品には樹脂識別コードがよくみられます。

しかし製品が破片だったりすれば樹脂識別番号もわからないし、見た目での識別は難しいものです。

材質の選別にはラマンや赤外分光を使って化学的に分別することもありますが、機器が高額なだけに使っているところは限られています。

3. 複合樹脂の問題

さらにプラスチック製品が単一の樹脂ではなく、複合樹脂で作られているとさらにやっかいになります。複合樹脂とは、複数の材質のプラスチックを合わせて作るもので、たとえばポリエチレンとポリアミドを合わせるという具合です。

プラスチックをリサイクルするには同じ材質を集める必要があると述べましたが、現在の日本ではプラスチック製品を単一樹脂ではなく複合樹脂で作ることが多いため、これがいっそうリサイクルを難しくしています。

4. 汚れたプラスチック

廃プラスチックの大部分は包装容器に使われたプラスチックなので、そこには食品を包んでいた容器も多いです。

そういった容器包装は食品の油などで汚れており、これを洗浄するところから始めないといけません。匂いもついています。プラスチックは炭化水素骨格でできており、疎水性が高いので油がつきやすく、落ちにくいのです。

脂っこい食品をいれたおいたタッパーを洗うとき、かなり大量の洗剤を使わないとキュッキュッとなるまでキレイに洗えませんよね?それはプラスチックが油をくっつける性質があるからです。

コンビニで大量に発生する弁当容器についた油汚れをいちいち洗浄などできません。当然、あふれるように発生するごみをキレイに洗浄することは現実的ではなく、結局リサイクルされずに焼却や埋め立て地処理に回されています。

5. 添加剤の問題

プラスチックのリサイクル率が低い他の原因は、プラスチックに添加されている化学物質(添加剤)です。

プラスチック製品を作る過程で、プラスチックに柔軟性や耐久性をもたせたり、着色したりするために様々な化学物質が加えられています。

添加剤には有害な物が非常に多く、リサイクルしたものが汚染されるためリサイクルを困難にしています。

余計な色が付いたりしたらリサイクル後の品質も落ちてしまいます。たとえば、

日本の高いリサイクル率のからくり

他にも様々ありますが、基本的には上記がプラスチックのリサイクル率が低い原因です。

そのためプラスチックのリサイクル率が比較的高いヨーロッパでも30%程度、米国では9%に留まります。では日本はどうでしょうか?

日本はプラスチックのリサイクルが進んでいるという声も聞きます。実際はどうなのでしょうか?

実際のところ、ほとんどは焼却しています。

日本では2013年の1年間に940万トンの廃プラスチックが発生しましたが、このうち約7 割(67%)が焼却され、25%がリサイクル、8%が埋め立て処理されました(環境省)。

焼却されたプラスチック67%の内訳をみてみると、10%が単純に燃やされ、残り57%は燃やして発生した熱を有効利用(熱回収)しています。この熱回収を日本ではサーマルリサイクルと呼んでおり、リサイクルの1つと位置付けていました。

だからサーマルリサイクル(熱回収)した57%と他のリサイクル25%を足し合わせて、82%という驚異的に高いリサイクル率を達成しているわけです。でも熱回収をリサイクルに位置付けているのは主に日本で、国際的に熱回収はリサイクルとして認められていません。

最近は環境省もこれを認めてか、サーマルリサイクルという言葉を使わずに「熱回収」とだけ述べるようにしています。

すると純粋なリサイクル率は25%ということになりますが、その内訳をみると実は7割は(中国や東南アジアなどの)海外に輸出し、輸出先でリサイクルしていました(環境省)。

ということは、実質的に日本国内でのリサイクル率は1割に満たないことになります。

海外に頼るリサイクルと中国ショック

日本は、毎年150万〜160万トンのプラスチックごみを主に中国に輸出してきました。

中国はかれこれ30年間ほど、ヨーロッパ(EU)、米国、日本をはじめとする地域から廃プラスチックを輸入し、これをリサイクルしてまた海外へと輸出していたのです。

経済的に貧しかった中国は、石油を輸入してプラスチック製品を作るよりも廃プラスチックを輸入してリサイクルするほうが安上がりだったからです。海外から輸入されたペットボトルは、中国国内でぬいぐるみやベッドの中綿などにリサイクルされてきました。

リサイクルのための輸入待ちのペットボトル

ペットボトルはこのようにプレスされて海外へ輸出される

しかし、中国は経済的に豊かになり、自国から出てくるプラスチックごみの管理もままならなくなりました。そして、輸入した廃プラスチックの洗浄作業などで環境が汚染され、リサイクルに携わる人々の健康被害も深刻化してきました。

そのため中国は、「クリーンな中国」を取り戻すために、海外からの廃プラスチック輸入を2018年1月にストップ。世界中に激震が走り、中国ショックと呼ばれました。

慌てた日本やヨーロッパをはじめとする国々はごみの輸出先をタイやベトナムなどの東南アジア諸国にシフト。しかし、そもそも大量のごみを受け入れる体制の整っていない東南アジア諸国でごみを裁けるはずもありません。すぐに東南アジア各国の処理能力をオーバーし、受入拒否が相次いでいます。

2018年後半に米国、EU、日本が輸出した廃プラスチックの総量は170万トンと半減しており、押し戻された分の自国での処理が追いついていないのが現状です(日本経済新聞)。日本でも1年間に50万トン分が国内に留まっています。

これを受け、EUは2030年までに使い捨てプラスチックを廃止すると緊急発表。近年、成果がめざましいEUのプラスチックフリー政策は、中国が輸入をストップしたことも大きな背景にあります。

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