プラスチックは、世界で最も広く使われている素材の1つです。私たちの日常生活は、恐ろしいほどプラスチックに囲まれています。 家の中、職場、車の中、通勤電車やバスの中を見回してください。プラスチックで溢れかえっています。
プラスチックは私たちの生活の中で様々な役割を果たして来ました。もはやプラスチックなしの生活は想像すら不可能でしょう。
一方で、プラスチックの利用は目に余る環境問題を生み出し、また目に見えない汚染を引き起こしています。世界的規模の問題として認識されいます。ここでは、海洋プラスチックとは何か、なぜ問題なのかについて述べていきます。
プラスチックの何が問題なの?
海のプラスチック汚染は、地球温暖化と違って「目に見える」問題であり、その深刻さは映像を通して人々に伝わりやすいものです。たとえ映像で伝えられなくても、誰しもが海岸や浜辺に打ち上がっているプラスチックごみを見たことがあるだでしょう。
しかし、なぜこんなにも海のいたるところにプラスチックごみがあふれているのでしょうか。それは毎年1000万トンのプラスチックが海に漏れ出しているからです。今、世界中で毎年4億トンのプラスチックが生産され、大部分は瞬く間にごみとなり、一部が海に漏れ出しています。
プラスチックごみをぱんぱんにつめた6つのレジ袋を思い浮かべてください。それを1つ1つ上に積み上げて、今度は積み上げた6つの袋を30センチおきに世界中の海岸線に沿って並べていくことを想像してください。
そう、アジア、北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、南極すべての大陸の海岸線です。それが毎年海に流れ込む1000万トンのプラスチックのだいたいのイメージです。
周囲を見渡してください。プラスチック製品が見つからないことはまずないでしょう。歯ブラシやスマホのケース、ノートパソコン、メガネ、子供のオモチャ、着ている服さえ大半はプラスチック(化学繊維)です。
外食中なら、使っている食器やフォークはプラスチックかも知れないし、コーヒーをテイクアウトすればプラチックのフタがついてきます。
紙コップだって水が漏れないように内側はプラスチックでコーティング。
ここ数十年の間に、レジで渡される袋は紙からプラスチックに代わりました。ガラス瓶はプラスチックボトル(PETボトル)になりました。荷造り用のロープはナイロン製のロープに代わりました。
プラスチックは世界中で最も広く使われている材料の一つで、ガラスや木材のような伝統的な素材にはない、実用面で素晴らしい性質を多く持ち合わせています。
プラスチックは安価で、軽量で、丈夫で、思い通りに型を変えることができす。金属のように錆びることはないし腐食もしません。
透明にもできるし、あるものは耐水性があり、耐熱性があり、耐薬品性があり、電気も通しません。しかしプラスチックが海のごみになると、この素晴らしい性質が仇となります。
プラスチックはその極めて頑丈で安定した構造のために生物に分解されないからです。海に流れ込んだプラスチックは数百年間消えないごみとして地球上に蓄積を続けているんです。
プラスチック汚染からは逃げられない
広い太平洋の真ん中に浮かぶ小さな無人島を想像してみてください。誰も住んでいない、誰も訪れることもない、世界中の大陸から最も遠く、人間活動から最も隔離されている島です。
そんな島の海辺の風景を、あなたならどう思い浮かべますか?美しい海を望む自然豊かな最後の楽園。そんな海辺を想像するかもしれませんね。
太平洋のど真ん中にある英国領ピトケルン諸島のヘンダーソン島はまさにそのような島で、最も近い都市でさえ5000km以上も離れています。
5年から10年に一度だけ、調査目的のために限られた人だけが上陸を許される、まさに人間活動とは無縁の島なんです。しかしこの島の浜辺にはおびただしい数のプラスチックごみが散らばっています。
推定で約4000万個のプラスチックごみがビーチに散乱しているのです。毎日3500個以上のプラスチックごみがこの島の浜に打ち上がっています。
この島は、南太平洋環流と呼ばれる海流の中心付近に位置するため、主に南アメリカから海流にのって運ばれて来るごみや、漁業船から捨てられ流れてくるごみの溜まり場になっていたのです。
北に目を向けてみましょう。人間活動から遠く離れた北極は、当然汚染されていないものだと思われていました。しかしここでもマイクロプラスチック(小さなプラスチックの粒)が見つかっています。
ノルウェー・スヴァールバ諸島の南と南西に位置する北極海で行われた調査航海では、水面付近で採水した全ての海水からマイクロプラスチックが見つかり、さらに深い場所ではもっとたくさんのマイクロプラスチックが見つかったのです。北極海で見つかったマイクロプラスチックは、大きさが平均2ミリメートル程度で、ほとんどが化学繊維でした。
さらに北極の氷の中からも数多くの明るい色のプラスチックの欠片が見つかっています。海水が凍るとき、水柱に含まれていた様々な粒子が氷の中に閉じ込められますが、そのときにマイクロプラスチックも氷中に閉じ込められていたのです。
氷中から見つかったマイクロプラスチックの数は、多いときには1平方メートルあたりに200 粒を超えていました。
今度は南極に目を向けてみると、予想通りというか、やはり南極海もプラスチックで汚染されています。南極海の海底の堆積物と海表面からもマイクロプラスチックが見つかってるのです。
これら一連の報告は、地球上のどんな遠い場所にもプラスチックは存在し、もはや人間活動と無縁の場所でさえプラスチック汚染からは逃げられないことを物語っています。
今日、世界中の海の表層に浮いているマイクロプラスチックの数は控えめに見積もっても5兆個より多く、銀河系の星の数よりも多いと推定されています。
海の表層だけではありません。プラスチック汚染は海洋の隅々に広がっており、深海底や海塩からもでてきます。世界中どこを探しても、プラスチックが見つからない海はおそらくもう存在しないと言われています。
海のどこにプラスチックがあるのかと質問するのはナンセンスで、プラスチックのない海はまだあるのかと疑問を投げかけるべきでしょう。
海にプラスチックが広がると何が問題なの?
プラスチックが海の隅々に拡散して蓄積を続けると何がまずいのでしょうか?いろいろまずいことはあります。
ひとつ例を挙げろといわれれば、それは海洋生物がプラスチックを餌と間違えて食べてしまうことです。
プラスチックは劣化して、バラバラに砕けます。こうして小さくなったマイクロプラスチックを餌と間違えて食べてしまう海洋生物の報告はますます増えています。
プラスチックには製造の段階で加えられた有害な化学物質が含まれているし、過去に国際条約で禁止されたDDTやPCBsのような疎水性の有機汚染物質をプラスチックはスポンジのように吸着します。
そして海洋生物は汚染されたプラスチックを食べ、汚染物質は食物網に取り込まれ海の生態系を脅かしているのです。
中には私たちが食べるシーフードも含まれています。私たちが捨てたごみが、やがて私たちの食卓に帰ってくるルートができつつあり、人間にも害を及ぼす‘可能性’があるのです。
まとめ:プラスチックは便利だけど…
プラスチックは便利です。
プラスチックは私たちの生活と社会・経済を様々な側面から支えており、プラスチックから受けてきた恩恵は計り知れません。
しかし、プラスチックの大量生産と大量消費が海の生態系を脅かし、目に余る環境問題を生み出しているのは紛れもない事実です。
海洋のプラスチック問題は国連や首脳会議で大きく取り上げられ、国際的に緊急を要する課題となっています。政府や企業は、この問題がどれだけ大きく、どこまで被害が広がっていて、何が一番いい防止策または軽減方法なのかを知りたがっています。
そして研究者たちは海洋プラスチックの発生源、行方や汚染の影響といった科学的な問いに答えようと、猛烈に研究を進めています。
私たちは、この問題について知識を持ち、今後どのようにプラスチックと付き合っていくのか、きちんと自分の考えを持っておく必要があるでしょう。