コンビニやコーヒーショップでのテイクアウトに必ず使われる使い捨て紙コップ。
一般的な紙コップは内側に防水コーティングが施してあり、その原料は主にポリエチレン。
紙コップとはいうものの、プラスチックなしでは保温性が保てなかったり、飲み物が漏れたりして都合が悪いんです。
ですが、そんな紙コップも脱プラが進んでいます!
100%プラなし素材!PlasticFriの紙コップ・ストロー
今世界中でプラスチックフリーな紙コップが次々と生まれているのを知っていますか?
ここでは世界的な賞も受賞した「PlasticFri」の生分解性・堆肥化可能な紙コップとストローをご紹介します。
材料はパルプと植物由来プラスチック、もちろん生分解性
PlasticFriの紙コップは100%生分解性で堆肥化可能な新しい紙コップ。
紙は持続可能な森林管理が行われている木材が原料。コーティングは従来の石油由来のプラスチックではない、植物由来のポリマーが使用されています。
また、90日以内に堆肥化が可能。万が一自然の中に放置されて微細化しても、自然に害を及ぼしにくいのが従来の紙コップとの大きな違いです。
防水加工された紙コップはリサイクルの禁忌品ですが、この紙コップは普通の紙としてリサイクルも可能。
将来的にこのような新しい紙コップの廃棄ルートが整えば、紙として再生できることが期待されています。
スウェーデンの大手コンビニではすでにコーヒーの販売等で利用されていて、SDGs先進国ではとても注目されている使い捨て紙コップなんです。
ホットもOK!普通の紙コップと全く遜色なし
こちらがPlasticFriの紙コップ。見た目には一般的な紙コップと全く見分けがつきません。
内側のコーティングは少しだけ光沢感があるように感じます。触ってみるとサラサラとした感触。
厚みは普通の紙コップより若干厚く、押しつぶした時の強度が違います。
飲みものに一番影響が大きいのが匂い。100円ショップで買った普通の紙コップは、使い始めに薬品臭がしたのが気になりました。
PlasticFriも無臭ではありませんが、より紙に近い匂いです。
お湯
70℃くらいのお湯を入れてみました。
厚みの違いからか、PlasticFriはなんとか素手で持てましたが、普通の紙コップはかなり熱くて数秒で手を離してしまいました。
コーティングはふやけたり質感が変化したりすることなく、時間が経っても品質をキープしていたのは素晴らしいです。
コーヒー
ホットコーヒーでも試して見ました。
温度は約60℃。このくらいの温度なら、どちらも素手でしっかり持てます。
コーヒーのように香りを楽しみたい飲み物については、コップの匂いはすこし気になるかも。
そのほか、普通の紙コップとの違いは汚れのつき方。PlasticFriの方は底にコーヒーの跡が残っていました。
素材自体はリサイクル可能でも、汚れてしまったら燃えるゴミにせざるを得ません。(普通の紙コップは汚れていなくても焼却の一択)
一方で、海外では日本より圧倒的に埋め立ての割合が高いことを考えると、自然への影響度はPlasticFriの方が小さいのは明らか。
リサイクルできなくても、安心して捨てられるというのは海外の方にとっては大きなメリットになりますね。
ストローは柔らかめ、だけど耐久性あり
紙コップと同じ素材で作られた紙ストローもあります。
奥の一般的な紙ストローより少し太めです。
飲み物に浸かるため、表面もコーティングされていてツヤツヤとした質感があります。
コーティングされているにも関わらず、今まで試してきた紙ストローの中では一番柔らかく、ソフトな口当たり。
先端部分はふやけやすいですが、形状はしっかりと保たれているため問題なく飲めます。
ストローには継ぎ目がありますが、接着剤は使われていないとのこと。
時間が経っても継ぎ目がはがれることはなく、耐久性は高く感じました。
注目のスタートアップ企業、”PlasticFri”のここがすごい
PlasticFriはスウェーデンはつのベンチャー企業。
創業者はAllen Mohammadi氏とMax Mohammadi氏の兄弟で、2017年のForbes U30にも選出されています(Forbes)。
2020年には世界のスタートアップ企業1400社の中からWord’s Most Innovative Sustainability Start-Upsを受賞(Utilities)!
今注目のスタートアップ企業なんです。
PlasticFriでは今回ご紹介した紙コップやストローのほか、ショッピングバッグやゴミ袋、通販用の封筒型パッケージ(メーラー)を展開。
もちろん全てプラスチックフリー。どの製品も従来の石油由来のプラスチックとは違った、環境に優しい6つの特徴が備わっています。
- 再生可能な原料
原料は主に農業廃棄物や非食用植物といった、豊富で低コスト、再生可能なものを使用。 - 堆肥化可能
製品は100%堆肥化可能。90日以内に堆肥化でき、有機肥料や天然元素に分解される。堆肥化の欧州規格(EN13432)の認証も取得。 - CO2を削減
製品のCO2排出量を最大90%削減。 - プレミアム品質
環境へのインパクトを最小限にしながらも高品質を維持。 - 生分解性がある
100%生分解性。自然界に出ても無害な化合物に安全に分解する。 - 毒性を持たない
動物や自然にとって有害な従来のプラスチックを使用しない。
PlasticFriの製品1トン(紙コップ約14万個)で、約26,000リットルの水、1,400リットルの石油、4,200kWhの電力、3.53㎥の埋め立てスペースが節約できるのだそう(One Young World)。
2020年に世界で消費された使い捨て紙コップは2,447億個にも上ったと言われ、今後もコロナの影響で食品のテイクアウトやオンライン注文などさらに増えると予測されています(EMR)。
製品1つ1つでは小さな貢献ですが、世界中の人が手に取ると、とてつもなく大きな成果に結びついて行くんですね。
どこで手に入る?
PlasticFriの日本国内の代理店は株式会社ゲシェル。
PlasticFriの紙コップやストローのほか、SDGs関連製品の輸入販売、日本企業のグローバルオープンイノベーション支援を行っています。
また、日本で唯一イスラエルや北欧スタートアップデータベースサイトを運営しているベンチャー企業でもあります。
▶︎お問い合わせはこちらまで。
使い捨てカップとその代替品がそれぞれ抱える問題とは?
使い捨てカップは世界中のコーヒーショップの定番。手頃な価格で、お店にも利用客にも便利なものです。
しかし、英国のような紙コップの大量消費国であってもリサイクルされるのは400個に1個。
ゴミ問題にも大きな影響を与えている使い捨てカップの使用を減らそうと、再利用可能なマイカップを持参すれば割引サービスをするカフェも増えています。
それにも関わらず、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、マイカップの推進どころか割引サービスを利用する人は減っています。
使い捨てカップのリサイクルが難しい理由、そして繰り返し使える代替品への切り替えが進まない理由は何なのでしょうか?
使い捨てカップのリサイクルと廃棄問題
多くの持ち帰り用カップは発泡スチロールやポリプロピレンなど石油ベースのプラスチック製のものと、ポリエチレンでコーティングされた紙製のものがあります。
これらは断熱性が高く、漏れを防ぎ、機能的には申し分ないものです。
しかし、使い捨てカップには多くの資源が必要。
米国だけでも毎年2,000万本の木と120億ガロン(約45億リットル)の水が紙コップの製造に使用されていると推定されています。
プラスチック製のカップは天然資源は少なくてすみますが、製造にかなりのエネルギーを消費します。
発泡スチロールとポリプロピレンはどちらも安価。メーカーが材料を入手するのは簡単ですが、リサイクルは困難です。
紙コップもプラスチックの裏地を取り除く処理が必要ですが、そのような施設を持った地域は世界で見てもごく少数に限られています。
リサイクルにかかるコストも問題です。新しいプラスチックで新しいカップを作った方が、リサイクルするよりも安上がりなのです。
このようにリサイクルに対するインセンティブが大幅に不足しているため、世界中で膨大な量の使い捨てカップが埋立地に送られています。(日本ではほとんど燃やされますが、海外では埋め立てが多い)
発泡スチロールとポリプロピレンのカップは分解するのに最大450年かかり、プラスチックコーティングの紙コップは約30年かかると言われています。
埋立地の場合、分解の際に二酸化炭素とメタンが待機中に放出され、温室効果ガスの排出を加速させてしまうのです。
またプラスチックはマイクロプラスチックに微細化され、空気、土壌、水を汚染し野生生物や環境に害を及ぼします。
人間の健康への影響ははっきりとわかっていませんが、私たちは毎年10万個ものマイクロプラスチックを摂取していると推定されています。
生分解性・堆肥化可能なカップの課題
使い捨てカップは、生分解性および堆肥化可能な材料で作ることができ、時間の経過とともに分解されます。
ただし、生分解性と堆肥化には大きな違いがあります。
生分解とは時間とともに水や二酸化炭素などに分解されること。
それに対し堆肥化とは「腐葉土」として知られる有機化合物に分解されること。これによって、周囲の環境に栄養素が供給されていきます。(生分解は自然に起こりますが、堆肥化は酸素や水、熱、微生物の介入が必要)
つまり、堆肥化可能なカップは生分解性ですが、生分解性のある素材は必ずしも堆肥化できるとは限らないことに注意が必要です。
堆肥化可能なカップがその役目を全うするには、適切な処理施設に送られ、また消費者も廃棄ルートを正しく理解していることが条件。
しかし、公共の堆肥化サービスやコンポストが習慣化されている都市はほとんどありません。
欧州ではほとんどの都市ゴミは最終的に埋め立て処分されるか(24%)、焼却されます(27%)。リサイクルされるのは半分未満(31%)で、堆肥化はさらに少なくなります(17%)。
また埋立地には分解に必要な条件が管理されていません。堆肥化・生分解性のカップでも何年もそのままの形で残る可能性があります。
仮に分解が進んでも、微生物は嫌気的に(酸素なしで)分解し、温室効果ガスであるメタンを大気中に放出してしまいます。
そのためEUでは産業的に堆肥化できる素材は「12週間以内に分解し、6ヶ月後に完全に生分解する」ことを義務付けています。
再利用可能なマイカップの課題
マイカップは自宅や車の中に簡単に忘れてしまいますし、コーヒーショップに行きたいときに計画的に持っていないと、使い捨てカップに頼ることになります。
お子様づれならなおさら。洗う手間まで考えると、使い捨てカップは簡単に廃棄でき、時間と労力の節約に役立ってくれます。
マイカップやタンブラーを使えば割引されることも多いです。
しかし、オーストラリアの調査では割引を実施してもマイカップを使う人数が増えなかったという報告もあります。
英国のスターバックスでは、紙コップで注文した利用客に0.05ポンドの料金を追加したところ、48%がマイカップを持参すると回答。
しかしこういった試みは英国内のコーヒーショップ全体の約1〜2%にすぎず、再利用可能なカップだけで使い捨てカップの需要を抑えるにはまだまだ時間がかかりそうです。
参考:PERFECT DAILY GRIND “Why is recycling single-use coffee cups so difficult?”
再利用可能なカップとプラなし使い捨てカップはどっちも必要
スターバックスでは新しい取り組みとして、再利用可能なカップで飲み物を提供し、利用客は後日返却する循環型プログラムを試験的にスタートしました。(2021年11月22日〜2022年5月31日)
手ぶらで来店でき、洗わずに返却できるとあってとても便利。カップのレンタルから返却までLINEを使って簡単に利用できます。
個人的にはとてもいいアイデアだと思っていますが、飲んだら捨てられる使い捨てカップと違って、必ずどこかの店舗に立ち寄らなければなりません。
店舗数の多い都心や頻繁に同じ店舗を利用する人には都合がいい反面、そうでない人にとってはわざわざ返しに行く時間が必要になります。
また、カップは無料で利用できますが、今後の状況によっては料金がかかる可能性もあるそう。
そういった面を考えると、使い捨ての需要は根強く残るだろうことは容易に想像できます。
マイカップやデポジット式のカップは、それが苦にならない人が主体になって広め、ゆっくり着実に社会の空気感を意識を変えていくものかなと思います。
もちろん、法律で使い捨てプラを減らして行く政策をトップダウンで進めていくことも必要。
使い捨てカップは、マイカップはデポジット式が浸透するまでのつなぎや、どうしてもそれらが利用できない環境でこそ活用されるべきだと感じます。
そして、いかに環境負荷をかけずに提供できるかも鍵になります。
その一つが生分解性・堆肥化可能なカップの普及。
実際にスターバックスとマクドナルドは2019年にNextGen Cup Challengeを共同で開催。
これは生分解性でリサイクル・コンポストしやすい次世代のカップを開発できる企業を募り、選ばれた企業に資金提供を行うものです。
このコンペでは世界の12企業が受賞しましたが、現時点では店舗への導入には至っていません(Eco Watch / Aug 2021)。
しかし今回取り上げたPlasticFriのカップが母国スウェーデンでは広がりつつあることを考えると、そんなに遠い話ではありませんし、技術はすでに存在しています。
根本的にゴミをなくす再利用可能なカップ、便利さと環境負荷の低減を両立したプラスチックフリーな使い捨てカップ、どちらも必要不可欠であることは間違いありません。
利便性を保ちながら過剰なプラスチック依存から抜け出せる日がきっと来るはずです。
まとめ
いかがでしたか?
ここではPlasticFriの生分解性・堆肥化可能な紙コップをご紹介しました。
これまでの紙コップは内側がポリエチレンで防水加工され、リサイクルの禁忌品に。また埋め立て処分の多い海外では、生分解できないことによる環境問題が大きく取りざたされています。
その解決策の1つが生分解性・堆肥化可能な使い捨てカップ。
PlasticFriの紙コップは植物由来の特殊技術によるコーティングが施され、紙としてリサイクルも可能。
再利用可能なカップとの二本柱で、今後どんな広がりを見せるのか注目です。